五反田をパリに変えた水原希子と
冒頭のラジオで登場するしまおまほ
小柳 ところで、最後のそば屋は、中目黒の吉そばですか? 映画の撮影でもそこを使ったのですか。
大根 吉そばは、(撮影の)交渉をしたら、母体の会社はスタジオ運営している株式会社ノアだけあって、音楽に理解があるのか、撮影に協力的で「日曜日だったら撮影OKですよ」っていう店舗がいくつかあったので、そこから選んだ感じです。民生さんも何回か使っているみたいですね。
小柳 映画のラストでは、吉そばから出てきたコーロキがあかりと遭遇するじゃないですか、橋の上で。あそこは大根さんとしては出したかったシーンですか。
大根 場所ありきな感じでしたね。最後吉そばから出てくるシーンは、実際吉そばの中は新橋で撮っているんですが、コーロキが店から出てきて歩くところは五反田駅の近くの橋です。目黒川にいい感じ橋があって、昔からそこの橋がすごく好きで、「撮りようによっては、パリみたいに撮れるよな」って思っていて。しかも希子ちゃんだったら、五反田をパリに出来るはずだと思って。
渋谷 あそこスゴくムードありますよね。そのシーンの撮影が終わった後に大根さんがLINEで10秒くらいの動画を送ってくれたのを観て「この映画めっちゃおしゃれじゃないか!やったあ!!」って思いました(笑)。
大根 原作に沿って、立ち食いソバ屋ではラジオで「ハリウッドスターが日本の女の子と付き合っているらしい」という話を流しているんだけど、ラジオで喋っているのがしまおまほさんっていう。だからフリはあるのですけどね、気づかないよね。
小柳 なるほど!あかりのファムファタールっぷりだけじゃなく、ラジオで終わるみたいなところも含めて、やっぱり「クーリンチェ」だ!(笑)。だから今日のまとめとしては、“この映画は日本の「クーリンチェ」だ”ということでいかがでしょうか(笑)。 最後に、出来上がった映画に対するチョックンの率直な感想は?
渋谷 もう本当に幸せで……。
大根 この人、(映画の)スタッフですからね(笑)。
聞き手 / 小柳帝、撮影 / 関めぐみ、構成 / otoCoto編集部
渋谷直角(しぶや・ちょっかく)
1975年、東京都生まれ。数々の雑誌でコラムや漫画を執筆。『週刊SPA!』(扶桑社)『GINZA』(マガジンハウス)『CREA』(文藝春秋)などで連載中。最新刊は『デザイナー渋井直人の休日』(宝島社)、『コラムの王子さま(42さい)』(文藝春秋)。愛称はチョックン。
大根仁(おおね・ひとし)
1968年、東京生まれ。映画監督、映像ディレクター。これまでに手がけた主な作品はドラマと映画『モテキ』、映画『恋の渦』(13)、『バクマン。』(15)『SCOOP』(17)ほか。また、ドラマ『ハロー張りネズミ』や映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の脚本も担当している。
小柳帝(こやなぎ・みかど)
1963年、福岡県生まれ。ライター、編集者、翻訳者。マガジンハウス他、数多のカルチャー・ファッション誌で健筆を振るって来た。渋谷直角とは『relax』時代に親交を深めた。主な編・著書に『モンドミュージック』、『ROVAのフレンチ・カルチャー A to Z』、『小柳帝のバビロンノート』、翻訳書に『ぼくの伯父さんの休暇』がある。
映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
渋谷直角によるサブカル漫画を、妻夫木聡&水原希子を迎え、映画『モテキ』の大根仁監督によって実写映画化した作品。「力まないカッコいい大人」の象徴・奥田民生に憧れる編集者のコーロキ(妻夫木)は、家電雑誌からライフスタイル雑誌の編集部に異動になって、おしゃれ度の高い文化に困惑するが、前向きに仕事に取り組んでいる。ある日、仕事で出会ったファッションブランド広報の美女・天海あかり(水原希子)に一目惚れしたコーロキは、あかりに見合う男になるべく奮闘するが、あかりの自由すぎる言動や小悪魔的な魅力に振り回され、身も心もボロボロになっていく。
スタッフ
監督・脚本 大根仁
原作 渋谷直角
配給 東宝
キャスト
妻夫木聡(コーロキ)
水原希子(天海あかり)
新井浩文(吉住)
安藤サクラ(美上ゆう)
松尾スズキ(編集長・木下)
9月16日(土)、全国順次公開予定。
コミックス『完全版 奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
映画化を記念して、大幅加筆した完全版として発売。
●カバーデザインを一新!
●50ページ以上! 著者渾身の大幅加筆!
●物語の舞台となったライフスタイル雑誌編集部「マレ」。創刊から休刊までのリアルすぎるクロニクル。映画に登場する「マレ」の表紙デザインや記事ページも公開!
●渋谷直角による映画化までの道のり日記
などなど、大充実の内容に。