映画作家として、人として、影響を受けた人物と作品
──具体的に映画作家として影響を受けた作品を挙げてください。
自分への影響ということで、ひとつの映画を挙げるのは、意味がないね。映画という世界全体から影響を受け、現在の自分が存在すると思っている。監督で強いて挙げるとしたら、アルフレッド・ヒッチコック、ベルナルド・ベルトリッチ、大島渚、ジャン=リュック・ゴダールかな。ヌーヴェルヴァーグの作品は大好きだ。
──では映画以外で、あなたの人生を変えた作品は?
小説なら、トーマス・マンの「ブッデンブローク家の人びと」だね。12歳の時に読んで、非常に感銘を受けたんだ。映画作家としてというより、人間として影響を受けた部分が大きいと思う。“構築された社会における退廃”への興味がかき立てられた作品だよ。
取材・文/斉藤博昭
撮影/名児耶 洋
ルカ・グァダニーノ
1971年、イタリア・シチリア州生まれ。1999年、ティルダ・スウィントン主演『The Protagonists』で映画監督デビュー。『ミラノ、愛に生きる』(2009)では再びスウィントンを起用し、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞の外国語映画賞にノミネート。続く『胸騒ぎのシチリア』(2015)でもスウィントンが主演し、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選ばれた。2017年の『君の名前で僕を呼んで』は世界的に大ヒットし、アカデミー賞で作品賞・主演男優賞など4部門にノミネートされ、ジェームズ・アイヴォリーが脚色賞を受賞。日本でもロングランヒットを記録した。
『サスペリア』
1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にボストンからやってきた。初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。一方、心理療法士クレンペラー博士は、患者であった若きダンサーの行方を捜すうち、舞踊団の闇に近づいていく。やがて、舞踊団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた――。
監督:ルカ・グァダニーノ
音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、
ミア・ゴス、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、
クロエ・グレース・モレッツ
配給:ギャガ
2019年1月25日(金)公開
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公式サイト:https://gaga.ne.jp/suspiria/
「ブッデンブローク家の人びと」トーマス・マン/岩波文庫
1929年にノーベル文学賞を受賞したトーマス・マンが1901年に発表した長編小説。「ある家族の没落」の副題で、ドイツの一ブルジョア家庭の変遷を四代にわたって描く。ある実業家の家庭が代を追うにつれ、芸術的、精神的なものに支配され、人々は繊細複雑になって遂には生への意志力をも失ってゆく。ノーベル文学賞受賞は主にこの作品によると言われている。