Jan 06, 2019 interview

「ホラー映画を撮ったつもりはない」 ― 傑作『サスペリア』再構築のルカ・グァダニーノ監督が目指したもの

A A
SHARE

 

1977年、日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」のキャッチコピーで、大ブームを巻き起こしたホラー映画『サスペリア』。その41年ぶりとなるリメイクが完成した。監督を務めたのは、オリジナルが作られたイタリアの出身で、『君の名前で僕を呼んで』などで知られる、ルカ・グァダニーノ。ベルリンのダンス・カンパニーを舞台に、ダンサーの行方不明の事件が起こり、恐ろしい真実が明らかに……という物語の基本は同じながら、その作風はガラリと変わり、またもや観る者を怪しい世界へと導いていく。来日したグァダニーノ監督に作品への想いなどを聞いた。

 

オリジナル版との出会い、リメイクへの熱き想い

 

──1977年の『サスペリア』は、あなたが13歳で初めて観て衝撃を受けた作品だそうですが、それ以来、今回のリメイクを作るまで心にずっと留まっていたのですか?

ダリオ・アルジェントの『サスペリア』は一度たりとも頭から離れることはなかった。これまで人生を送りながら、折に触れては『サスペリア』の記憶が甦り、頭の中を出たり入ったりしていた感覚だ。

──是が非でも自分でリメイクしようと思ったわけですね。

他の監督でリメイクされるという話を聞いた時は、ちょっとマズいと思い、なんとか自分で撮りたいと製作費を集め始めたんだ。そしていざ、自分で監督しようと思ったとき、ダリオの『サスペリア』は一回、頭からすべて消し去り、私にしかできない『サスペリア』を作ろうと決意したのさ。

 

 

──オリジナルの『サスペリア』は、日本では中高生にまで人気が広がる大ブームを起こしました。イタリアでも同じでしたか?

日本での熱狂は知っていたよ。ものすごいブームだったらしいね。タイトルが違う映画を『サスペリア2』として公開したと聞いた時は、さすがに驚いた(笑)。日本ほどではなかったが、イタリアでも大きな話題になったよ。公開時、私は子供(6歳)だったけど、後からいろいろ話を聞いて、そのブームを実感したんだ。

 

 

“音楽監督”トム・ヨークへのアプローチ、音楽が完成するまで

 

──前作ではゴブリンの音楽が、作品と同じくらい“伝説”になりました。今回の音楽はレディオヘッドのトム・ヨークが担当し、またしても話題を集めています。

トム・ヨークに最初にアプローチしたのは、映画の準備を開始した時期だった。だからロケーション探しや、プロダクションデザインなど、さまざまなプロセスを彼に見てもらえたよ。とにかくいろんなことを話したね。舞台となる1977年の音楽はどういうものか? どういう楽器を使ったらいいのか? さらにダンスのための音楽や、(ティルダ・スウィントン演じるダンス・カンパニーの中心人物である)マダム・ブランの言葉としての音楽。ホラー映画におけるサウンドトラックという一般的なことまで、1年くらいかけてトムとたっぷり話し合ったんだ。その結果、素晴らしい音楽が完成したと満足しているよ。

 

 

──音楽と映像の組み合わせで、思い出深いシーンを教えてください。

撮影前にすべての音楽が完成していたわけじゃない。ダンス・カンパニーでフォーク調のダンスを踊るシーンがあるが、そこは音楽が撮影に間に合わなくて、私が「ワン、ツー、スリー」などとカウントしながらキャストたちに踊ってもらった。撮影した後に、音楽を合わせたんだ。

──キャストは、どんな音楽なのか分からずに踊っているのですね。

まあね。でも映画の中でダンスシーンを撮る時、音楽ができていないのはよくあることだよ(笑)。