日常のあらゆる束縛を放棄して、逃げ出す。都合が悪くなれば、また逃げる。逃げて逃げて逃げまくる――。劇作家・演出家のみならず、映画監督としても『愛の渦』『何者』『娼年』と1本ごとに観客を魅了してきた三浦大輔。その最新作となる『そして僕は途方に暮れる』は、2018年に上演された自作の同名舞台を映画化。
主人公の菅原裕一を演じるのは、舞台版に引き続きKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔。ワガママでどうしようもない人生の逃亡者を、ウザさと不快感も作り込み、見事に演じてみせる。裕一の恋人に前田敦子、母に原田美枝子ほか、中尾明慶、原田美枝子、香里奈、毎熊克哉、野村周平ら個性派俳優が脇を固めているのも見どころ。
そして、10年前に裕一ら家族を捨てて出ていった、ワガママでどうしようもない父・浩二を豊川悦司が演じている。最近、年頃の娘や息子の父親役が多くなったという豊川さんに、今回のやさぐれた父親像をどのように作り上げ、主人公の故郷であり、監督の故郷でもある北海道苫小牧でのロケーションの様子などと共にうかがいました。
「父親三部作」のつもりで、異なる父親像を
―― 映画の撮影に入る前に、もとの舞台はご覧になりましたか?
いえ見てないです。
―― それは、あえて見なかった?
最初から、そういう話になりませんでした。監督との打ち合わせでリクエストがあれば、もちろん拝見していると思いますが。舞台からの映画化を、同じ演出家と同じ主役の作品ですが、たぶん映画は別物として作ろうとしているんだろうなという感触でしたね。
―― 脚本を読んで、どんな印象でしたか?
すごく上手くできているホンだなと思いました。構成がすごく上手につくられていて、人間関係もわかりやすい。それでいて、藤ヶ谷くんが演じた主人公に、だんだん気持ちが寄り添っていく、そういうホンになっているなと思いました。
―― 最近は『いとみち』なども、年頃の子どもを持つお父さん役が増えてきましたね?
そうですね。この映画の前に『いとみち』や『子供はわかってあげない』で、お父さん役が続いていたので、最初にお話をいただいたとき、こうなったら“父親三部作”にしちゃえぐらいのつもりでお引き受けしたっていうのも正直なところで(笑)。
―― 年頃の子どもの父親役を楽しんでいたわけですね。
それなら、全然毛色が違う父親像を演じるのも楽しいかな、みたいなノリはありましたね。俳優として、どういうアプローチができるのか。演ってみると、父親というものは、こんなに違うんだなという(笑)。