Jan 14, 2023 interview

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

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自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一は、長年同棲している恋人・里美と、些細なことで言い合いになり、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。その夜から、親友、先輩や後輩、姉や母のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出す。逃避の末、行き着いた先で、かつて家族から逃げていった父と10年ぶりに再会する。平凡な一人のフリーターが、ほんの些細なことから、あらゆる人間関係を断ち切っていく、人生を賭けた逃避劇。逃げ続けたその先で、彼を待ち受けていたものとは‥‥。

各所から絶賛された同名の舞台を映画化。舞台版「そして僕は途方に暮れる」を書き下ろし、演出も手がけた三浦大輔が、本作品の脚本・監督を務める。主人公・菅原裕一を演じるのは、舞台版に引き続き、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔。前田敦子、中尾明慶、豊川悦司、原田美枝子など個性派俳優が脇を固める。また、本作のエンディングでは、1984年に大ヒットした伝説の楽曲「そして僕は途方に暮れる」を大澤誉志幸本人が映画のための新アレンジで歌う。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『そして僕は途方に暮れる』の三浦大輔監督に、舞台・映画へのこだわり、撮影時のエピソード、映画への思いなどを伺いました。

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

 “映画的な舞台” を映画化する意義を問いながら

池ノ辺 監督はもともと舞台版で監督をされていますが、舞台と映画では随分と違いがあるんでしょうか。

三浦 単純に実際のロケーションがあるかないかが、一番大きな違いですね。舞台版では背景はあっても固定で、場面の転換はできますが、実際の場所の再現は到底できないわけですから。ただ、舞台版は2018年にオリジナルの書き下ろしで上演したのですが、今回の映画『そして僕は途方に暮れる』に関していえば、あえて舞台っぽくなく、画作りなどもこだわって映画的なものを目指しました。

池ノ辺 舞台版のときから映画化しようと考えていたんですか。

三浦 そこまで考えてはいなかったです。けど、映画化の際には、舞台化したことで自分の中で流れとして受け入れやすかったと思います。つまり、舞台版でも映画のような画作りをしていましたが、その時、自分の頭の中で自然と思い浮かぶイメージはあって、それに合わせてロケ地を選ぶというふうに置き換えやすかったと思います。

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

池ノ辺 舞台版での映画のような画作りってどういうものですか。

三浦 この物語は主人公が目の前の現実から逃げていくわけですが、それを舞台で場面転換してつなげていくというロードムービー的な手法で表現したんです。舞台ではそれが表現としての面白みになったんですが、そうした映画っぽい舞台をそのまま映画にすると、それは普通の、ありきたりのものになりすぎるかなという危惧もありました。でもその辺りは、映像でしかできない表現を加えるなど映画ならではの仕掛けを自分の中で組んでいって、この物語を映像にする意義を見出していったというところです。

池ノ辺 シネスコ(シネマスコープ)サイズでの撮影にもこだわりがあったんですよね。

三浦 そうですね。映画『そして僕は途方に暮れる』は、ストーリーとしてはもう本当に些細なことの連鎖で、言ってしまえばただ謝れば済むような話です(笑)。映画にするには取るに足らないような出来事が続くので、逆にしっかりシネスコサイズで映画的に撮る方が、歪で面白いのかなと思ったんです。でも、シネスコで撮影するにはあまり向いていない部屋の中でのシーンが多かったので、カメラマンは苦労したと思います。

池ノ辺 演出にもこだわりがあったんでしょうか。一つのシーンを100回くらい撮ったという話も聞きましたが(笑)。

三浦 100回は撮ってないですけど(笑)、ただ、ロケ地が、人通りが多いとか、撮影には難しい場所で、通行人が入ってしまったりそういうテクニカルなことでのやり直しが何度もありました。

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

池ノ辺 よくカメラマンが、ベストのタイミングで撮るためにずっと風が吹くのを待っているとか聞きますけど、そんな感じ?

三浦 それはありますね。舞台から3年経って、自分の中でもしっかりとイメージが固まっていて、こういう画でいきたいという思いが強くあるので、どうしてもその理想に近づけたくて、それこそ風が吹くとか、ここでちょっと車が通るとか、そういうところにこだわった結果、何テイクにもなってしまったというのはあります。

撮り直しの大半は、演出の理由ではないんですが、ラストシーンに関しては、演出として何が正解なのかが自分の中でも腑に落ちていなくて、藤ヶ谷(太輔)くんに何度もやってもらったということはありました。そこはどうしてもこだわりたかったので、テイクを繰り返したんです。

自分ではあれだけやったのには意味があると、もちろん思っていますけど、役者さんの方から考えると、疲労しきる前の演技でOKを出してほしいというのもあると思うんです。その辺りは今後改善していかなければいけないなと思う点ですね。

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