映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』が6月4日(金)に公開される。これにより2014年にテレビシリーズとして始まったアニメーション大作が完結を迎える。劇場版を含む本シリーズは、弐瓶勉が築き上げた独特のSFワールドをCGアニメの先駆者ポリゴン・ピクチュアズが映像化した作品である。
そのSFサーガの主人公である谷風長道を演じた逢坂良太、ヒロインの白羽衣つむぎ役を演じた洲崎綾、お二人へのインタビューが実現した。本シリーズが一貫して採用している、録った声に映像を当てる“プレスコ”という手法。それはつまり、声の力、声優の力を最大化することが作品の価値を押し上げるという意思決定の表れではないだろうか。そして、それを可能にさせるのは、声優の後ろを”衛る人”たちの存在だ。前衛と後衛がつむいできた本シリーズは遂に終着を迎え『シドニアの騎士 あいつむぐほし』で完結する。
今回、お二人には本作までの道のりを振り返っていただきながら、その斬新な作品づくりの一端を語っていただいた。劇場に足を運ぶ前でも、後でも、ぜひ一読いただけると本シリーズの深みを一層感じていただけるのではないかと思う。
—本作『シドニアの騎士 あいつむぐほし』で長らく続いたシリーズが完結を迎えますが、あらためて『シドニアの騎士』シリーズの魅力をどう感じますか?
逢坂良太(以下、逢坂):本当に(劇場版・テレビシリーズの)どこからでも楽しめて、いろんな方におすすめできる作品になってると思います。それこそSFが好きな人、恋愛物語が好きな人、普通の人間ではなく別の生命体が好きだよって方も楽しめます(笑)。あとはやはり音響周り、重厚感というか、ステレオでも表現できない音づくりですね。音響監督の岩浪さんが凄くこだわってつくってらっしゃるので。
洲崎綾(以下、洲崎):もう最近では映画や予告で「岩浪美和監修」って出てますよね。もう何者!って(笑)。でも、本当にこだわり抜いた音を感じられるので、音響マニア・音ファンの方にもぜひ観てもらいたいですね。
–洲崎さんは、本作の魅力についていかがですか?
洲崎:逢坂さんが言ってくれたように本当にどこからでも入れます。今回の劇場版は、特に初見の方にも凄く優しくなっているので、初めて『シドニアの騎士』を観るという方にも、もちろんコアなファンの人にも、満足いただけると思います。本当に泣けるポイントがとても多いです。脚本の村井さんのまとめ方が素晴らしくて、戦闘シーンはもちろん、長道とつむぎのキュンとするやりとりもありますので、ぜひ観てほしいと思っています。
–ご自身が演じられたキャラクターを振り返ると、どんな想いがありますか?
逢坂:やはり長道は、外の世界を知らずに育ってきたので最初は周りに受け入れられない。それがまわりの人の助けを得ながら成長していく姿を見れたっていうのは凄く感慨深いですし、だからこそ本作の10年経った長道を見て、「いい男になったな」とも思いました。ちゃんと今まで歩んできた長道の人生が『あいつむぐほし』に表れているなと。まっすぐで純粋に育ってきたからこそ、かっこいいと思える長道が生まれたのかなと思います。
–実際に逢坂さんも長道と出会ってから長い年月を共にしましたね。
逢坂:もう今だから言えるんですけど、最初はオーディションに受かったという話を聞かされず、でもスケジュールは抑えられていたので、(長道の役は)落ちて別の役をいただけるのかなと思ってたんです。前日くらいに台本がきて開いたら、自分の名前が一番前にあって「主役じゃねーか!」って驚愕した記憶が強く残ってます。そんなとこから始まったんですけど、最初は新人ということもあり、必死に皆さんについていくのが精一杯でしたね。
洲崎:私たちはほぼデビュー同期なのですが、最初はまわりの皆さんがほぼ先輩で。それが今や、まわりの操縦士たちがほぼ後輩で…歳月を感じるはずですよね(笑)。
–洲崎さんは、星白閑からはじまり多くのキャラクターを演じられてきました。それぞれのキャラクターに対する思い入れがあるかと思いますが。
洲崎:はい。星白、紅天蛾、つむぎと、形を変えてこの作品に関わらせていただいたのですが、オーディションを受けたときに<星白閑>として受けていたので、その星白を演じていたときの思い出をすごく鮮明に覚えています。序盤で戦死してしまうキャラクターで、長道も星白の影を追い求めるツラい時期が長かったので、そういう物語の展開も踏まえて、亡くなったあともみんなの心を捉えて離さない、神秘的な要素を持った女の子として演じられたらいいなと第1期のときに思っていました。つむぎはつむぎとして、幸せを願いながら演じていましたが、やはり私の中にはかすかに星白も心にいて、複雑な気持ちを持ってしまう場面もありました。でも、私自身そういうふうに感じられることが嬉しくもあり、それはとても得難い体験をさせてもらったと思っています。
–前回のテレビシリーズから6年ほど間が空いての本作ですが、最初に劇場版で新しい作品が出来ることを聞いたときはどんなお気持ちでしたか?
洲崎:劇場版になるってお話を、飲み会の場でサラって伝えられて(笑)。でも、総監督の瀬下(寛之)さんの口から聞けた喜びはありましたね。たぶん瀬下さんは私たちを喜ばせたくて、わざわざ飲み会をセッティングしてまで直接伝えようとしてくれたと思うんです。そこでお話伺ったときはめちゃくちゃ嬉しくてテンション上がってしまって。やっぱり(前作から)6年だから長いですよね。キャストとしてというよりも、いちファンとしてまたスクリーンでシドニアの続きが観れるということがとても嬉しかったです。
逢坂:なんとなくやってくれるとは思っていたんですけど、劇場版でまとめられるのかなという心配はありましたが、杞憂でした。うまく補完しつつ綺麗に完結されています。