“原点”に立ち戻れた殺陣シーン、“初挑戦”のアクション&乗馬
──監督にとっても役者のお二人にとっても、非常にチャレンジングな現場になったと思いますが、青木さんは先日のインタビューで、アクションシーンの撮影について「ローズ監督はリアルファイトに近いものにこだわっていた」とおっしゃっていました。そういったこともある意味、“自由さ”からくるものだったのではありませんか?
青木 いわゆる昔からある“時代劇の様式美”といったものを極限まで排除して、なるべくリアルで鬼気迫ったファイトシーンにしたいという監督からの要望に応えながら撮影に挑むというスタイルでした。もちろん殺陣師の方も含めて話し合いながら撮っていったのですが、そのおかげで“お芝居で戦うことの原点”に立ち戻ることができ、さらにその原点を深く考えることもできました。ローズ監督の演出や考え方に感化されて、アクションというものを考え直すことも出来たのは大きかったです。
ローズ ヒロイックでエレガントなバレエのような殺陣も多いのですが、刀で殺し合うのにそういった綺麗な殺陣ではリアルに見えないんじゃないかと思いました。黒澤明監督の『羅生門』(50年)のようにいろんな視点から殺陣シーンを撮ったりすることもあれば、詳しい撮影方法は内緒ですが、この映画では様々な工夫をしてリアルファイトに見えるようにしています(笑)。菜奈さんもアクションシーンを頑張っていましたね。
小松 アクションも乗馬も初めての挑戦でした。それに姫なのに男装したり(笑)。乗馬も殺陣も撮影の一カ月前から練習したのですが、初めてのことはいつもワクワクするので楽しかったです。それに男性と女性の見せ方の違いを研究したり、着物を着ているときの所作などを一から学べたのもすごく勉強になりました。
青木 時代劇に参加すると、日本人として知っていて損はないことが学べるのも良いよね。
小松 本当にそう思います。時代劇の所作や動きの美しさを学んだことでまた時代劇に参加したいと思いましたし、乗馬やアクションもハマってしまったので、今後も続けていきたいと思っています。
ローズ そういうきっかけを作れたことは僕も嬉しいです。時代考証についてもお話しさせていただくと、衣装デザインを担当してくださったワダエミさんや美術監督の佐々木尚さんがしっかりとあの時代のものを反映してくださったので、私自身はあまり気にせずに作ることができたように思います。ワダエミさんに関しては当時の服をそのまま忠実に作るというわけではなく、より表現力の優れた衣装やヘアスタイルを作ってくださったのが素晴らしかった。侍のカツラを4Kテレビなどで見るとカツラのつなぎ目などが目立ってしまうこともありますから(笑)。それなりの時代考証は大切ですが、当時の髪型なんかは(葛飾)北斎等の浮世絵や撮影するためにかしこまって撮った写真を参考にするしかないんです。日常風景を撮った自然体の人たちが写っている写真はほとんどないですし、北斎が描きやすいのがよくある侍の髪型だったのかもしれない。本当は普段、どんなヘアスタイルをしていたかなんて、確かなものは誰もわからないんですよね。