Apr 16, 2019 interview

岸田繁インタビュー【後編】:“役者の一つ”として送り出す音楽制作で出会う“新しい発見”

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いろんな作品の音楽を手掛けることで“新しい発見”がある

──岸田さんにとって、くるりの音楽ではなく、こういった作品の音楽を作るというのはどんな意味を持つことなのでしょうか。

それはもう、自分の生業の一つやと思ってます。なので、日常的にお仕事をいただきたいくらい。今回もすごく楽しかったですし、とにかくいろんなものに音楽をつけたいなと改めて思いました。

──やってみたい作品のジャンルとかってあるんですか?

もう何でも。そういうお仕事があったら、僕は好きとか嫌いとか抜きにしてその世界に入り込んで作るので、これがやりたいっていうのは特にありません。あ、でも、時代劇とかでガサ入れが入る時の音楽は、いつか作ってみたいです。「御主、何奴!」みたいなシーン(笑)。それは昔からずっと思ってますね。

──いろいろなジャンルを手掛けることで、そこにはきっと新しい発見があるんでしょうね。

そうなんですよ。今回のリラックマにしても、新しい発見がたくさんありましたね。カオルさんを見て、こういう気持ちがあるんだなぁとか。他にも、自分が音楽を作らへんかったら絶対に見過ごしていたと思うようなこととかも、音楽を作ることで受け取れるものがありました。

──それについて具体的に思い浮かぶエピソードはありますか?

「星空」というエピソードがあるんですけど、僕、それがすごい好きで。そこでの宇宙人の立ち振る舞いを見て、なんか知ってる……こういう人いるなぁって気持ちになりました(笑)。

──サウンドトラックにも宇宙の曲がたくさんありますね。

そうですね。ここは(制作サイドからの)指定が多かって、えらい気合が入ってるところなんやなぁと思って(笑)。

──岸田さんが曲を作る時も思わず気合が入った?

気合は入れましたよ、それなりに(笑)。というのも、これは作品全体に言えることなんですけど、どのエピソードも答えが出ない結末っていうか。だからと言って答えを視聴者に委ねているわけではなく、そのきっかけだけを、ふっと置いていくような、置いていかないような、そういう結末が多いんですよね。その感じは、すごく音楽に影響しました。深入りすると変に答えを出してしまったりするから、なるべく深入りしないように。だから、何て言うか……、小学生の頃にやる漢字ドリルみたいなやつですね。あれって後ろに答えがあることがわかってるじゃないですか。でも、もし答えを見たとしても、やってみると難しかったりする。そういう感じで、今回の音楽の中でも、別にドキッとさせるシーンじゃないのに、ちょっとドキッとする音の変化を入れたら、物語には出てきていないカオルさんの狂気的なものも出てきたとか、そういうことはちょこちょこやったりしています。

──そういうところはぜひ注意して聴いてもらいたいところですね。

いや、さらっとでいいです(笑)。物語を好きになって、何回も観ているうちに気づいたら口ずさんでた、みたいな感じになったらいいなと思います。