Mar 25, 2019 interview

池上彰が解説!映画『記者たち』の見どころ、フェイクニュースの見分け方【後編】

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ジャーナリストを目指すようになったきっかけ

 

──otocotoではご登場いただくみなさんに、その道に進むことになったきっかけや思い出の一冊について語ってもらっています。ネットを見ると、池上さんは高校生の時にあるテレビドラマを観たことからジャーナリストを目指すことになったとありますが、この情報はフェイクじゃないですよね?

フェイクではありませんが、正確でもありませんね(笑)。私がジャーナリストを志すきっかけになったのは、小学6年生の時に「続 地方記者」(朝日新聞社)という本を読んだことです。地方局に配属された記者たちの仕事ぶりを描いたノンフィクションで、記者という仕事に興味を持つようになりました。就職先にNHKを選んだのも、NHKでは最初は地方勤務になるので地方記者になれると思ったからなんです(笑)。高校時代に観たのは、「ある勇気の記録」というNET(現テレビ朝日)で放映されていたテレビドラマです。中国新聞社の記者たちが広島の暴力団と闘うという内容で、中国新聞を読める地域で暮らすことになったら中国新聞を購読しようと思いました。NHKに入局した最初の赴任地が島根県の松江放送局だったので、中国新聞を購読するようになりました。当時の中国新聞の記者たちも大変でした。社を挙げて反暴力団キャンペーンを行なっていたんですが、社長宅に銃弾が撃ち込まれたり、新聞配達員が襲われて川に投げ込まれたりしています。

 

 

──記者は体を張る、危険な職業でもあるんですね。

それでも日本はまだ平和です。メキシコの記者が麻薬カルテルの抗争についての記事を書こうとすると、その記者ではなく新聞社の事務員や営業スタッフが狙われるそうです。そのため、メキシコの新聞は麻薬カルテルについての報道ができない状況になっています。先日、ワシントンにあるニュージアム(報道博物館)へ行ったのですが、これまでに殉職したジャーナリストたちの名前が壁いっぱいに記されていました。その中には一緒にリビアへ取材に向かったこともある後藤健二さんの名前もありました。そして壁にはまだまだ大きな余白が残されていました。これからも多くの記者たちが、命の危険を冒すことになるのでしょう。真実を報道することはとても難しいということを、ぜひ覚えておいてください。

取材・文/長野辰次
撮影/中村彰男

 

【前編】は こちら

 

プロフィール

 

池上彰(いけがみ・あきら)

1950年生まれ、長野県出身。大学卒業後の1973年、NHK入局。1994年より「週刊こどもニュース」(NHK)で初代「お父さん」役を務める。2005年にフリーランスのジャーナリストとなり、時事問題やニュースを分かりやすく解説し、テレビ番組をはじめ様々なメディアで活躍している。3月30日に、レギュラー番組「池上彰のニュースそうだったのか!!」(EX)が放送予定。著書も多数刊行されており、直近に「民主主義ってなに?」(岩崎書店)などがある。

 

作品情報

 

『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領はサダム・フセイン政権を倒壊させようと「大量破壊兵器の保持」を理由にイラク侵攻に踏み切ることを宣言。イラク戦争が始まろうとしていた。アメリカ中の記者たちが大統領の発言を信じ報道するなか、新聞社ナイト・リッダーの記者であるジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)はその発言に疑いを持ち真実を報道するべく、情報元を掘り下げていく――。

監督:ロブ・ライナー
出演:ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ロブ・ライナー、トミー・リー・ジョーンズ 他
字幕監修:池上彰
配給:ツイン
2019年3月29日(金)公開
© 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://reporters-movie.jp