Mar 25, 2019 interview

池上彰が解説!映画『記者たち』の見どころ、フェイクニュースの見分け方【後編】

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巧妙になりつつあるフェイクニュース

 

──国際問題や社会情勢が分かる、オススメの映画はありますか?

最近の映画では『グリーンブック』(公開中)が面白かったですね。ぴあのアプリ版で「池上彰の映画で世界がわかる!」を連載しているのですが、先月紹介した『グリーンブック』がアカデミー賞作品賞を受賞して、良かったなと思っています。1960年代の米国南部州では黒人と白人はホテルやレストランが隔離されていた事実を描いたもので、現在のトランプ政権を生み出した米国内にある白人至上主義をあぶり出した興味深い内容です。

あと、これから観ようと思っているのですが、『バイス』(4月5日公開)も面白そうです。イラク戦争の黒幕だったチェイニー副大統領を主人公にしたもので、『記者たち』と内容的に重なります。国際情勢に疎かったブッシュ大統領を、副大統領だったディック・チェイニーが巧みに操ってイラク戦争へと踏み切らせたわけです。チェイニーと一緒になってイラク戦争を持ち掛けたジョン・ボルトン国務次官は、今もトランプ政権で大統領補佐官を務めています。ボルトンはイラクの次にイランを狙っていると言われており、要注意人物です。

 

 

──いろんな情報が溢れる中、どうすればフェイクニュースに騙されずに済むのでしょうか?

それはとても難しい質問です。前回の米国大統領選で、ローマ法王がトランプを支持したなんてフェイクニュースが流れましたが、これは誰にでもすぐフェイクだと分かるものでした。ローマ法王が米国の大統領選に関与するはずがありません。それでも一部の人は騙されてしまいます。最近は手の込んだフェイクニュースが増えています。例えば、根拠となっている記事のURLが示されているのですが、クリックしてみるとその記事もフェイクだったりするんです。中にはCNNやニューヨーク・タイムズの記事を引用しており、URLをクリックしてみると全く関係ない記事だったりします。引用された記事が有名メディアだと記されているだけで、騙されてしまう人がいるわけです。フェイクニュースはどんどん巧妙になってきています。

──騙されないように普段から気をつける、ということしか対処法はない?

そうですね。どれだけ健全な常識を働かせることができるか、あるいは健全な懐疑心を持つということでしょう。ニュースに接するときは、「本当かなぁ」「ちょっと待てよ」という気持ちを持ったほうがいいと思います。猜疑心ではなく、懐疑心ですよ。猜疑心を持つと友達をなくしてしまいますから(笑)。