Jan 12, 2020 interview

「日本の神話にも通ずるものがあると感じた」―森山未來が語る『オルジャスの白い馬』

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役者、そしてダンスなどでの表現者として国内外で活動し、昨年は大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺~』の美濃部孝蔵役で落語に挑戦した森山未來。初の海外映画主演作となる『オルジャスの白い馬』は日本とカザフスタンの合作で、愛する人に真実を語れない不器用な男・カイラートを全編カザフ語で演じている。カザフスタンロケで感じた日本の現場との違いや本作を“寓話的”と感じた理由、さらに影響を受けた本について語ってくれた。

フレキシブルに動くカザフスタンの現場

──本作は森山さんにとって海外作品初主演作になりますが、カザフスタンでの撮影はいかがでしたか?

切り立った山など壮大な景色に囲まれると、自然というものにこの身を委ねざるを得ないですよね。そんな時、すごくホーム感を感じました。生まれ故郷のホームという意味ではなく、生き物として人間がいるべき場所というか、もっと大きなホーム感がありました。もしもあの場所に一人取り残されてしまったら生きていく術がなくて死ぬかもしれない。だけど自然との対話って基本的にはそういうものだよなと、そんなことを感じた現場でした。

──日本の撮影現場との違いをどんなところに感じましたか?

メソッドに関してはリハーサルやテスト、段取りをしないということが大きく違いました。それから撮影監督が基本的に現場を仕切っていること。これはヨーロッパにおける撮影スタイルになります。カザフスタンの山や田舎町などといった広大で美しい風景の中で、撮る場所に関してはルーズというか、「絶対にこの画角で撮る!」といった決め打ちの撮影はしていなかったです。フレキシブルに動く感覚が強くて、スタッフもみんなそういった対応をしていました。日本の現場では撮影直前で何か変えるとなるとわりと融通が利かないことも多いのですが、どちらが良いとか悪いではなく、単なる考え方の違いなのかなと思います。

──カザフスタンのフレキシブルな撮影スタイルに感化された部分はありましたか?

まず、どこの国であっても台本通りの映像を撮ることは不可能に近いと思うんです。それよりも現場で監督が「ここを撮りたい」と思う直感を優先させたほうが結果的に良い作品になるだろうと。そういう意味ではさまざまな変更に柔軟に対応していくカザフスタンのやり方は自然なのかもしれないと思いました。

──全編カザフ語でのお芝居というのは森山さんにとってどのような体験でしたか?

これまでにも言葉に頼らない表現をやってきているので、音として言葉を覚え、それを台詞として話すことに抵抗はありませんでした。カイラートが生粋のカザフスタン人で、流暢にカザフ語を話せるという設定だったら非常に難しかったと思います。彼は突然どこかから現れてどこかに去って行くという、作品に違和感を持ち込む存在なので、ネイティヴな人がカイラートの言葉を聞いて、例え「あれ?」と違和感を覚えたとしても成立するんです。もちろんアドリブを入れるのは無理ですが、寡黙な男だしカザフ語に関してとくにストレスを感じることはなかったです。