Aug 27, 2022 interview

阿部寛インタビュー いくつになっても変わり続け、チャレンジする者を鼓舞する『異動辞令は音楽隊!』

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第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞に輝いた『ミッドナイトスワン』を手掛け、映画界でいま最も注目される内田英治監督による『異動辞令は音楽隊!』が全国公開中だ。

オリジナル脚本で描かれる本作は、コンプライアンスを問われるこの時代に、犯人検挙には手段を選ばない警部補・成瀬司の行き過ぎた捜査の結果、最前線の刑事から広報課内の音楽隊への異動辞令という青天の霹靂から始まるヒューマンドラマ。

主演を務めたのは、唯一無二の存在感を持つ阿部寛。主人公の転落から再生を振り幅の広い演技力で魅力的に演じ、その脇目もふらずに一心不乱に働いてきたミドル・エイジの奮闘と生き様は観る者の心を打つ。自身初となった音楽映画への出演とドラム演奏。新しいことに挑戦した阿部さんが、その苦労と喜びについて語ってくれました。

内田英治監督との初仕事

―― この作品に出演しようと思った理由を教えてください。

まず、内田監督と一緒に仕事したかったというのが一つ。『ミッドナイトスワン』を観て「どんな監督なんだろう?」と思っていたら、今回のお話を頂きました。あと最近、演じる役柄が重なってくるようになってきて、自分も新しいことに挑戦したかった。今回のような刑事役は何度か演じたことはあるけど、音楽映画にしても、実際ドラムを演奏するにしても、今までやったことがないんですよ。

―― 今回、内田監督とのタッグだけでなく、音楽映画にドラム演奏と初めてづくしだったわけですね。

ドラムに対して、ある意味、勝手に苦手意識もありました。けど、「練習過程で楽しいことや発見もあるだろう。それがうまく役につながっていけば、自分の役者としての変化にもなる」と考えました。「内田監督もこういった作風は初めてだし共に作っていけたらいいな」と思ったのが、この仕事を受けた理由です。

―― 脚本を読んだ感想は?

最初に「なんで監督はいま音楽隊を撮りたいのか?」と思いました。僕はマーチングバンドについて知識が皆無でしたから。ですが、固定観念のある無骨な刑事が、今までの仕事とは全く違う音楽隊に所属するという展開は、映画として面白く描けるんじゃないかなとも思いました。

―― 主人公・成瀬司のキャラクターについて共感する部分ありましたか?

諦めないで事件を捜査するといった無骨さは、人間味があって魅力があった。人生を投げていたわけではなくて、自分一人でも正義を貫こうとする勇気も、常に一生懸命前を向いていた。そこはすごく共感できる。

―― 反対に共感できなかった部分は?

共感できなかった部分‥‥。物語の前半にある流血するハードボイルドな部分かな。「これ映倫に引っかかるんじゃないか?」と思いながら演じていました(笑)。

―― いわゆる昭和の男ですよね、成瀬は。

昔のドラマの「特捜最前線」に出てくる刑事ですよね。現場百遍みたいな(笑)。時代遅れで、まわりから蚊帳の外みたいに扱われるんだけど、彼は自分の信念を通そうとしている、不器用な刑事で、欠点はちょっとハメを外してしまうところ。その人間が音楽隊に異動になり、最初は嫌っていた音楽隊も、そこに生きる様々な人間の生き方に触れ、自分も変わっていく。「こんな人間でもアップデート能力があったんだな」と。そこが面白かった。