Aug 27, 2022 interview

阿部寛インタビュー いくつになっても変わり続け、チャレンジする者を鼓舞する『異動辞令は音楽隊!』

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阿部寛、ドラムに出会う

―― 初挑戦のドラム演奏は、ずいぶんと苦労されたそうですね。

クランクインの3カ月前から練習を始めたんですけど、最初に叩いたときは、もうなんだかよく分からなくて(笑)。イメージでは、叩けるんじゃないかって、勝手に思ってたんですけど全然できなくて(笑)。1、2カ月は完成イメージから遠すぎて、半分諦めかけそうにもなりました。

―― それでも、諦めるわけにはいかない。

もうやるしかない!と一念発起して、スタジオ通うのも時間がもったいないから家でも練習できるようにと、音が出ないゴムパッドのドラムセットを購入しました。こういうところにお金かけないとね(笑)。でも、イメージ通りには全然うまくいかなくて。先生にも迷惑を掛けましたね、2カ月経った頃、やっぱり実際ドラムセットでやってみようということになって、スタジオで練習したんですよ。そうしたら、今までのは何だったんだというくらい手応えがあって、やっぱり本物でやらないとダメだなって反省しました (笑)。

阿部寛インタビュー いくつになっても変わり続け、チャレンジする者を鼓舞する『異動辞令は音楽隊!』

―― 練習の成果を自分で感じられると、嬉しいですよね。

先が見えない洞窟にいるような練習期間があったからこそ、その喜びを得たわけですよ。本番でやったときも明らかに進歩が見えて、努力は無駄にならないことを実感しました。

―― 本番で叩いたときは、気持ちよかったですか?

ドラムってパワープレイみたいなもんだとばかり思ってたんですが、先生がドラムの神様といわれるバディ・リッチの動画を参考として紹介してくれて、それをYouTubeで観たら、水面に広がる波紋のように繊細な音がしててそれを聴いたときに、世界が広がって、俄然興味が湧いたし。出来る出来ないとかじゃなく、そこで楽しくなりましたね。

――  他にも刺激を受けたミュージシャンはいますか?

バディ・リッチは神様なんだけど、デイブ・ウェックル、ステイーブ・ガッド、ヴィニー・カリウタのトリプルドラムもすごかったんです。前に出てきてトリプルでドラムだけでセッションするんですよ。ドラムっていうのは、だいたい後ろにいるもんだと思ってたから、勝手に。結構パワープレイなんだけど、もうドラムじゃないような奏で方をしていて、なんて繊細な音があるんだって、驚きました。

―― いまではドラムの音が気になったりするんじゃないですか?

実はドラムセット買おうかなと思っています。でも叩く場所がないから悩んでる (笑)。

阿部寛インタビュー いくつになっても変わり続け、チャレンジする者を鼓舞する『異動辞令は音楽隊!』

演じた本人を感動させたチカラ

―― 主人公のように音楽と出会って変わったとか、勇気づけられたという音楽経験はありますか?

10代20代のときは、よくラジオで歌謡曲を聴いていました。ベストテン世代だから、数々影響を受けてきたし、助けられてきたことも多かったと思います。音楽は、その時々の状況を思い出します。この間、映画『とんび』に出演したとき、僕が10歳にも満たない時代の音楽が劇中に流れて、初々しかった子供の頃を思い出しました。そう思うと音楽の力ってすごいですよね。

―― 変わるきっかけとして、新たな仲間とのつながりも大きかったと思います。阿部さんは、共演者やスタッフと接するときに心がけていることはありますか?

そうですね、積極的に話をしますね。まぁ、こっちから格闘技の話をするんだけど(笑)。僕が格闘技を観るのが好きなので、ボクシングにしても、UFCにしても、全部観てるんです。だいたい若手は、何かしら格闘技を観ているので、同じ目線で話せるじゃないですか。こっちも楽しいし。

―― そうやって完成された今回の作品をご覧になって、率直な感想は?

試写を観たときに、台本で読みきれていなかったと思ったシーンが何箇所かありました。ひとつは、成瀬が音楽を楽しみ出したことが分かる。本当に些細なシーン、そこが泣けるポイントになっていて、びっくりしました。前向きになってドラムの練習に向かうシーンで、たった3秒ぐらいなんだけど、歩き方が軽やかになっているんです。演じている自分でも意識はなかったけど、映画のなかで浮き出てくるようになっていて、気づかないうちに涙が出ていました。こういう経験は、いままでなかった。

阿部寛インタビュー いくつになっても変わり続け、チャレンジする者を鼓舞する『異動辞令は音楽隊!』

―― 涙もろいタイプですか?

ガッツリ泣ける映画を観て泣いたりはするけど、基本的にはそんな泣かないですね。それをふっと忘れて、涙が出ていた。そういうシーンがいくつかあって驚きました。自分が台本を読みきれていなかったところを、監督は演出されていたんだな、と感謝しています。

―― 演じている本人が感動するというのは、素敵な話ですね。

刑事生活30年、やり方を変えなかった頑固な人物が、今までとは違う喜びを覚える。崩壊寸前の家族への接し方も変わっていく。そこは感動的でした。自分の人生で変えていかなきゃいけないことって、たくさんあったと思う。そこで自分の考えを変えていけるかどうか、ですよね。人生って、そういうものだと思うから。この映画の肝は、そこです。