Jan 11, 2018 interview

男女で全く違う感想を抱く『伊藤くん A to E』、岡田将生にとっては「謎だらけの女性たち」が登場?!

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幸せを感じる瞬間を逃したくないから、俳優として新たな役に挑戦できる

 

──今回の伊藤くんもですが、最近はクセのある役柄が増えましたよね。

年齢とともに、出演させていただく作品の幅が広がり、挑戦させてくれる場所が増えたことは感じています。ずっと同じような役をやっていても、正直なところ、飽きがきてしまうので、こういった役をいただけると「嬉しい」と思う部分と、「試されているな」と感じることがあります。でもその度に、演じ終わって乗り越えた時、自分の俳優としての“余裕”が生まれるのかなと思っています。

──やりがいも増えますよね。

そうですね。22才で表現できる純粋さと、28才の表現する純粋さって、やっぱりどこか違うと思うんです。それに、作品や人の見方も少しずつ変化してきたので、変わった役や悪役も楽しんで演じられるようになってきて。むしろ、変わった役の方がやりがいがある気がしてきたので、伊藤という役は演じていてすごく楽しかったです。

 

 

──伊藤くんは、常に自信満々でしたが、普段の岡田さんは自信があるタイプですか?

自信は全くないですね。いまだに人前に立つのは苦手ですし、見られるのもあまり好きではないんです。自分で「じゃあ、なんでこんな仕事をしているのか?」って思う時があるんですが、やっぱり、僕が演じた役や作品を観て、いろいろ感じ取ってもらえる瞬間が何よりも嬉しいし、幸せを感じるんです。これは他には代えられないもの。その気持ちを逃したくないんです。この映画も、伊藤のような人生の送り方を映画を通じて知ってもらって、それが良いのか、悪いのかを、考えてもらえるだけで嬉しいです。

 

 

──毎回、新たな役を演じる時に不安は感じますか?

もちろん感じます。時には、「なんでこの役が出来ると思って受けたんだろう」って考えることもありますよ(笑)。でもその先には、先ほど言ったような幸せが待っていると思うと、全力で取り組もうと思えるんです。

 

 

──『伊藤くん A to E』をカップルで観に行くのは……どうでしょうか(笑)。

気まずくなるでしょうね(笑)。ただ、女性にはきっと共感してもらえると思いますし、男性は、女性の思ってもいない部分を知ることができるので、刺激になると思います。それに、伊藤の言葉はどれも妙な説得力があるんですよ。男女ともに、楽しんでもらえると思います。

 

 

──さて、otoCotoでは、みなさんに愛読書をお伺いしているのですが、岡田さんのオススメ本を教えてください。

いま、バッグの中に本屋さんで買った歌野晶午さんの「ディレクターズ・カット」が入っています。見出しに惹かれて手に取って、まだ読めていないのですが、すごく楽しみにしていて。この本もそうなんですが、普段からサスペンスが大好きなんです。特に中村文則さんが好きで、「R帝国」もそうですが、新刊が出たらすぐにハードカバーを買って読んでいます。僕、ハードカバーでしか読まないんです(笑)。恋愛小説は自分から読むことはないので、この「伊藤くん A to E」はとても刺激的で、すごく新鮮でした。

──ありがとうございました。では最後に、今作を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

この映画で、女性も男性も、恋愛において様々な選択肢がある事を感じてもらいたいですし、伊藤に関しては、全く変化しないという面白さがあります。女性は伊藤に会うと、自分の弱さを含めて、課題点が必ず見えてくるんですよね。それが決して良い方法とは思えないんですが、どちらにせよ、自分のダメな部分に気づかせてくれる人は少ないと思うので、一度、“伊藤くん”に触れてみるのもいいと思います(笑)。もちろん、女性が普段どんなことを考えているのかもわかる作品になっているので、男性にも観ていただきたいです。

 

取材・文/吉田可奈
撮影/三橋優美子

 

プロフィール

 

岡田将生(おかだまさき)

1989年生まれ、東京都出身。2007年の映画『天然コケッコー』で注目を集め、2009年は『ホノカアボーイ』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『重力ピエロ』など多数の映画に出演、第33回日本アカデミー賞で新人俳優賞に輝いた。その他の主な出演作に、『雷桜』、『告白』、『ストレイヤーズ・クロニクル』、『銀魂』、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』、ドラマ「ゆとりですがなにか」、日曜劇場「小さな巨人」、「名刺ゲーム」などがある。

 

作品紹介

 

映画『伊藤くん A to E』

かつては大ヒットを飛ばしたが、今は落ち目の脚本家・矢崎莉桜(木村文乃)。ドラマプロデューサーの田村伸也(田中圭)からの勧めで開いた講演会に参加した、AからD、4人の女性たちの切実な恋愛相談を、再起をかけた新作脚本のネタにしようと企んでいる。そんな彼女たちを悩ませ、振り回している男の名前が偶然にもすべて“伊藤”だった。ある日、莉桜が講師を務めるシナリオスクールの生徒の一人で、容姿端麗、自意識過剰、口先ばかりでこれまで一度も脚本を書き上げたことのない28才フリーターの伊藤誠二郎(岡田将生)が、莉桜と全く同じAからDを題材にしたドラマの企画を持ち込んできたと田村から聞かされる。さらにそこには、5人目の女性・Eが存在していて――。

原作:「伊藤くん A to E」(柚木麻子/幻冬舎文庫)
監督:廣木隆一
脚本:青塚美穂
音楽:遠藤浩二
出演:岡田将生 木村文乃 / 佐々木希 志田未来 池田エライザ 夏帆 / 田口トモロヲ・中村倫也 田中圭
主題歌:androp「Joker」 (image world)
配給:ショウゲート
2018年1月12日(金)公開
©「伊藤くん A to E」製作委員会
公式サイト:ito-kun.jp

 

原作本紹介

 

「伊藤くん A to E」柚木麻子/幻冬舎文庫

2011年~2012年に「GINGER L.」で連載された作品に加筆・修正して単行本化された、柚木麻子による連作短編集。美形でボンボン、博識だが、自意識過剰で幼稚で無神経、人生の決定的な局面から逃げ続ける男・伊藤誠二郎に振り回され、傷つきながらも立ち上がる女性たちの姿が共感を呼んだ話題作。第150回直木三十五賞に候補入りを果たした。

 

岡田将生さんが読みたい本

 

「ディレクターズ・カット」歌野晶午/幻冬舎

ベストセラー「葉桜の季節に君を想うということ」などの歌野晶午の最新作。報道ワイド番組の人気コーナーで紹介された若者たちの無軌道で無分別な言動が、実は下請け番組制作会社のディレクター仕込みのやらせだとわかった時、無口で不器用かつ根暗な若い美容師が殺人鬼へと変貌する。さらなる視聴率アップを狙うディレクター自身が暴走を開始し、静かなる殺人鬼は凶行を重ねる。警察の裏をかいて事件を収拾し、それを映像に収めようとするディレクターの思惑通り、生中継の現場に連続殺人鬼は現れるのか――?