Nov 02, 2016 interview

「10代の危うい感情やヒリヒリする感覚がすべて映像になっているんです」映画『溺れるナイフ』小松菜奈×上白石萌音インタビュー

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連載終了後も、世代を問わず圧倒的な人気を誇る少女マンガ、『溺れるナイフ』。その作品が、日本映画界の新鋭、天才と呼ばれる山戸結希監督により実写化! 菅田将暉と小松菜奈のW主演で作られた今作は、青春時代のヒリヒリとした部分を切り取った渾身作だ。今回は、モデルとして活躍しながらも、田舎に越してきた夏芽を演じる小松菜奈と、その夏芽に羨望のまなざしをむけるカナを演じる上白石萌音に撮影秘話をたっぷり話してもらった。

 

映画の世界観に飲み込まれる感覚だった(上白石)

──撮影を振り返っていかがでしたか?

上白石 私の撮影期間は1週間だったんですが、経験したことがないようなことが1度に起こりすぎて、あっという間に終わってしまいました。毎日があまりにも目まぐるしくて、ただただ映画の世界観に飲まれている感覚で…。実際に完成した映画を観て、「本当に撮影していたんだ」と実感したほど。まるで不思議な夢を見ているような時間でした。

小松 作品の雰囲気にグワッと飲まれる瞬間は多々あったよね。でも、そのせいなのか、出来上がった映画はすごく客観的に見ることが出来ました。実は、撮影中は本当に色々なことがあり大変だったので、この映画はちゃんと公開されるのかという不安が常にあったんです。

 

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上白石 とくに菜奈ちゃんは本当に大変だったよね。観ていてこっちまでドキドキするようなシーンがたくさんあったもん。

小松 うん。その分、映画には10代の危うい感情だったり、思春期のヒリヒリするような感覚が映像になっているんです。その画の全部が全力で熱くて、圧倒されるんです。これは映画館でしか感じられないものだと思うので、ぜひ大画面で感じてもらいたいですね。

 

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「大変だった」の言葉では終わらせられないほどの過酷な撮影でした(小松)

──本当に大変な撮影だったんですね。

小松 監督の思い入れが強いからこそ、求めるものが大きくて、私はそれに応えるために必死だったんです。だからこそ、「大変だった」という言葉では終わらせられないほどのものでした。撮影していた時は、いろんな感情があって泣きそうにもなりました。でも、実際に出来上がった映画を観ると、監督が作りたかったものがすごくよくわかるんです。撮影は大変だったけど、やっぱり、「監督は天才だ」って思いましたね。こんな思いでお芝居をしたことがなかったので、この作品がどう受け止められるのかすごく興味深いんです。

 

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──「一番辛かった」と思うシーンはどこでしたか?

小松 私はほぼ全部でした(笑)。コウちゃん(菅田将暉)といるシーンは、つねに必死。追いかけても追いかけても、コウちゃんは全然振り向いてくれないし、振り向いてくれたと思ったらどっかに行ってしまうんです。だからこそ、コウちゃんといるシーンは、体力的にも、精神的にも辛かったですね。でも、コウちゃんと唯一笑えたシーンがあったんです。それが、自転車に2人乗りするシーン。あの時は心からホッとしましたね。

上白石 大友(重岡大毅(ジャニーズWEST))とのシーンとは正反対だったよね。
小松 本当にそうなんですよ。大友とのシーンは、何もしなくても笑わせてくれるという安心感があるので、心から癒されました。

 

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──4人の現場の雰囲気はどんなものだったんですか?

小松 コウちゃん、大友、そしてカナちゃんを演じていた萌音ちゃんの3人がすごくストイックで、オンとオフがしっかりしていたんです。オフの時はみんなで話したり、ふざけていたんですが、シーンが始まるとスイッチが入って切り替わるんです。おかげで居心地が良くて、オフのときは自然体でいることができたのですごくよかったですね。

 

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カナは、心の闇を私たちの代わりに出してくれて、
私たちの代わりに傷ついてくれる存在だったんです(上白石)

──上白石さんは、演じたカナに対して、共感するところはありましたか?

上白石 カナは今まで私が演じた役とはかけ離れているんですが、自分自身と通じることがあるんです。

──それはどんな所ですか?

上白石 キレイな人への憧れや、自分は及ばないとう気持ちがすごくあるんですよ。それに自分の嫌な部分や、認めたくない部分がたくさんある事もわかるんです。カナは、女の子の誰にも言えないような、心の奥に渦巻いている闇を代わりに出してくれて、私たちの代わりに傷ついてくれる女の子だと思うんです。最初に台本を読んだ時、すごく切なくなってしまって…。演じる前に、一番感情移入ができたのがカナだったんです。

──演じることで、気持ちが押しつぶされそうになることもありましたか?

上白石 ありましたね。辛さだけでなく、切なさもわかるんです。でも、この役を演じきったら、また何か生まれるのではないかと思い、もがきながら演じていました。今振り返っても、スタートがかかったと同時に、自分が消えるくらいカナが憑依していたんです。だからこそ、つねに飲み込まれるような感覚になっていたんだと思います。きっと、この3人と一緒だったから乗り切れたんだと思うんですよ。役柄はドロドロしているけど、普段のみなさんはすごくいい人ばかりで、辛い現場だったからこそ、生まれるものがたくさんあったんです。

 

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小松 その分、結束力がすごく高かったよね。

上白石 うん。すごく仲良くなれた!

 

私も、ミステリアスな人に惹かれてしまう(小松)

──もし、実際にカリスマ性のあるコウちゃんと、親しみある、自分を愛してくれる大友だったら、どちらを好きになると思いますか?

小松 安定感が抜群にあるのは、大友ですよね。一緒にいれば幸せになれるだろうし、結婚するなら大友がいい。でも、10代の頃だったら、ミステリアスで自分に振り向くのか、振りむかないのかわからないような人に惹かれてしまうと思うんです。この人と一緒になれたら、その先に何があるんだろうということに、すごく興味を持つと思います。

上白石 20代になった今でもそう思う?

小松 う~ん。これほど必死に追いかけるのは、10代にしかできない恋だと思うんです。大人になると、遠慮もでるし、恋愛以外のことも考える時間が増えますよね。10代の“当たって砕けろ精神”が、この映画に出ているんじゃないかなと思います。

上白石 私なら、コウちゃんみたいな人は、私には届かない存在だと思っちゃうかもしれないですね。もちろん、憧れるけど、見ているだけでいいと思っちゃうかも…。私には住む世界が違うって一線を引いてしまうんです。なので、どちらかといえば大友を選ぶかも。……あっ! 妥協じゃないですよ!?(笑) 大友みたいにいるだけで場を照らせる人柄にはすごく惹かれるんです。