Nov 02, 2016 interview

「10代の危うい感情やヒリヒリする感覚がすべて映像になっているんです」映画『溺れるナイフ』小松菜奈×上白石萌音インタビュー

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過酷な撮影のなか、休憩時間に菅田君のギターで歌う
萌音ちゃんの歌声に癒されました(小松)

──オフの時間は4人でどんなことをして過ごしていたんですか?

上白石 菅田さんが自前のギターを持ってきて好きな曲を調べて弾いてくれていたよね。

小松 そうだ! 歌が上手な萌音ちゃんが、菅田君のギターに合わせて秦基博さんの『ひまわりの約束』を歌ってくれたんですよ。ちょうどそのときに山小屋の撮影で、かなり過酷な環境だったんです。顔は鼻水と涙でパンパンなのに、その歌声とギターの音色を聴いて一気に癒されました。

上白石 辛い撮影を終えた菜奈ちゃんを歌で包み込ませていただきました(笑)。

小松 本当に癒された~! あまりにも癒される空間すぎて、「このままここにずっといたい!」って思うほど(笑)。いい曲だし、いい声だし、本当に最高だった!

上白石 その演奏する前日に、菅田さんと何かセッションしようよという話になって、『ひまわりの約束』を選んだんです。その夜、菅田さんがギターを一生懸命練習していて、「私も本気で歌わなくちゃ!」と思い、私も自分の部屋でひとりで歌の練習をしました(笑)。

小松 基本的に、萌音ちゃんと重岡君は現場の光だったんですよ。私と菅田君はいつも血を見るような撮影だったので(笑)、本当に救いになりました。

 

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──「otoCoto」は様々なエンタメを紹介するメディアなのですが、お二人が好きなエンタメ作品を教えてください。

小松 映画『きみはいい子』という作品で、専業主婦を演じた池脇千鶴さんの演技がとてもナチュラルで、感銘を受けたんです。その演技に圧倒されて、一緒の職業でよかったとさえ思ったほど。ほかにも出ている役者さんが全員自然体で、ずっと見ていたくなるような作品です。この映画を撮った呉美保監督の作品が大好きなので、いつか一緒に映画のお仕事をすることが、今の夢です。

上白石 『アンネの日記』は、主人公のアンネと同じ年齢の時に初めて読んで、こんなに強い女の子がいるんだと思ったんです。アンネに比べたら、自分の悩みなんてちっぽけに思えたし、国も時代も違うけど、どこか自分の話のようにも感じたんです。分厚い本で、軽く読めるような作品でもないのですが、つねに本棚に置いて何度も読み返しています。

──では、最後にメッセージをお願いします。

上白石 普通の青春映画だったら避けて通るようなトゲトゲした部分や、美しいとは言えない感情が渦巻いた作品になっているんです。でも、そんなくすんだものに対してみんなが一生懸命だからこそ美しく見える映画になっています。劇中の登場人物と同世代の人が観たら他人事とは思えないだろうし、大人が観たらこの頃を思い出すと思うんですよね。恋愛映画というよりも、人間の心の深さを表現した作品なので、存分に刺激を受けてもらいたいと思います。

小松 原作が人気作品だからこそ、どう思うんだろうと感じているんですが、いろんな感じ方があっていいと思っていて…。胸キュンもあるし、どこか辛さを感じる人もいると思うんです。それが『溺れるナイフ』の魅力なので、観客の皆さんの衝撃になってほしいんです。たくさんの人に見てもらえたら嬉しいです。

 

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取材・文/吉田可奈
撮影/吉井 明

プロフィール

 

小松菜奈

1996年2月16日 東京都生まれ。2008年にモデルデビュー。2014年に『渇き。』のオーディションで中島哲也監督に発掘され、映画デビュー。『近キョリ恋愛』『バクマン。』ではヒロインを務める。2016年、マーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙サイレンスー』でハリウッドデビューを果たす。

 

上白石萌音

1998年1月27日 鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞しデビュー。2014年に初主演映画『舞妓はレディ』にて、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2016年には、社会現象を起こしているアニメーション映画『君の名は。』でヒロインを演じ注目を集めた。

 


 

映画『溺れるナイフ』

漫画家・ジョージ朝倉の同盟少女コミックを実写映画化した青春ラブストーリー。東京で雑誌モデルをしていた少女・夏芽(小松菜奈)は、父親の故郷である田舎町・浮雲町に引っ越すことに。自分が求めていたものと大きくかけ離れた田舎での生活にがっかりする夏芽だったが、地元一帯を取り仕切る神主一族の跡取り息子コウ(菅田将暉)と出会い、彼の持つ不思議な魅力に心を奪われる――。カリスマ的な光を放つという設定の主人公を、菅田と小松が見事に演じきる。この2人がさらに輝けたのは、女の子のヒリヒリした部分や影を演じきた上白石萌音や、暖かく優しく包み込む献身的な大友をナチュラルに演じきる重岡大毅(ジャニーズWEST)がいてこそ。4人が上手く絡み合い、誰もが10代の頃に感じたことのある恋愛の衝撃や同性への嫌悪、羨望などが潔く描かれた渾身作だ。監督は『あの娘が海辺で踊ってる』『5つ数えれば君の夢』など、少女の過剰な自意識を描いた作品で注目を集めてきた山戸結希。若い女性のカリスマ的存在である彼女の腕に感服する作品となった。

監督:山戸結希
原作:ジョージ朝倉「溺れるナイフ」(講談社「別フレKC」刊)
出演:小松菜奈 菅田将暉 
重岡大毅(ジャニーズWEST)上白石萌音 志磨遼平(ドレスコーズ)
斉藤陽一郎 嶺豪一 伊藤歩夢・堀内正美 市川実和子 ミッキー・カーチス
脚本:井土紀州 山戸結希
音楽:坂本秀一
制作:依田巽 中西一雄
エグゼクティブプロデューサー:小竹里美
企画:瀬戸麻理子
プロデューサー:朴木浩美
主題歌:『コミック・ジェネレイション』ドレスコーズ(キングレコード)
配給:ギャガGAGA★
公式サイト:http://gaga.ne.jp/oboreruknife/
11/5(土) 全国ロードショー
©ジョージ朝倉/講談社
©2016『溺れるナイフ』製作委員会

 

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原作「溺れるナイフ」ジョージ朝倉/講談社「別冊フレンド刊」

映画と本筋はほぼ一緒だが、原作には、彼らを取り巻く家族や、大人の黒い部分、そしてそこから自分のまっすぐな想いを貫こうとするコウの不器用な心と、夏芽の歪んだ愛の形が描かれている。より切ない大友の心や、より闇を表に出すカナなどの心理描写は、どこか痛くて辛いが、共感を覚える。誰かに必死に恋をしたり、憧れが憎しみに変わったりと、これは決して遠くはない自分の物語。多くの女性を一気に魅了した、勢いあふれる全17巻。

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関連書籍はこちら

 

「きみはいい子」中脇初枝/ポプラ社

「そこのみて光り輝く」でモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞した呉美保監督が、同名小説を映画化。まじめだがクラスの問題に向かい合えない新米教師や、幼い頃に受けた暴力がトラウマになり、自分の子供を傷つけてしまう母親など社会の問題を通して、様々な形の“愛”を描いた衝撃作。それぞれに人に言えないような経験や理由を基に、リアルな現実を鮮やかに切り取っている。もしかしたら自分にも起こりうることなのかもしれないと思わせるような物語に息をのむ。

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「アンネの日記」アンネ・フランク/深町眞理子(訳)/文藝春秋

ナチス占領下の異常な環境の中で、13歳から15歳という思春期を過ごしたアンネの日記が赤裸々に描かれた、勇気の書。どんなに不幸だと思われるような状況下でも、考え方さえかえれば、幸せになれるということを教えてくれる本書は、世代や世界を超えて多くの人間に気づきを与えてくれる。現在、鋭い批判精神などを含めた完全版も出版されている。

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