蜷川監督ならではの視点
――沢尻さんからご覧になった蜷川さんはどんな女性ですか?
とにかくパワフルで貪欲。すごいなと思います。そういう点が監督作にも出ていますよね。蜷川さんの映画の魅力は映像美や世界観はもちろん、やっぱり女性ならではの視点。とくにこの作品は、男性が撮っていたら全くの別物になっていたと思うんです。太宰の人生を彩った裏側にいた女性たちのストーリーを、女性の視点でそれぞれの女性をちゃんと成立させて描いている。そこは蜷川さんだったからだと思います。
――本作にもベッドシーンがありましたけど、蜷川さんはどういう演出をされるんですか?
今回はさほど大したことをやっていないと思います。というのも、たぶん実花さんも私も『ヘルタースケルター』以降、ちょっと基準がおかしくなってるんですよね(笑)。もともと脱ぐことにあまり抵抗がないので、そういう作品であれば(裸が)見えていても全然問題ない。でも今回は自分の中ではすごくおとなしめでした。
――沢尻さんの背中がとても美しかったのですが、何かトレーニングなどされたんですか?
この映画のためにというわけではなく、もうここ3年くらいは、日頃からすごくトレーニングして身体を鍛え上げています。トレーニングやヨガは日々欠かせないですね。
――現場はどんな雰囲気だったんでしょうか?
私は最初の方にクランクインして、途中ちょっと空いて、最後の方にまた小栗くんと一緒に撮影してクランクアップというスケジュールだったんです。私が抜けていた途中に大変なシーンを撮っていたらしくて、久しぶりに現場に行ったらスタッフのみなさんも、実花さんも小栗くんも、何だかちょっとテンションが違っていたので本当に大変だったんだろうなということを察しました(笑)。
――小栗さんとのシーンが多かったと思いますが、いかがでしたか?
本当に素晴らしかったし、かっこよかった。これに尽きますね。待ち時間はみんなでトランプしたりして和気あいあいとしていて。重いシーンを撮っていても(撮影の合間は)ワイワイ楽しくしていたんですけど、現場でもみんなを引っ張っていってくれるのはやっぱり小栗くんでしたね。
――太宰の破滅的な生き方は、現代の作家さんにはないと思うんですけど、どう映りましたか?
逆に静子みたいな人はいまの世の中にも多い気がしますけど、太宰が現代にいたら、たぶん生きていけないですよね(笑)。ただ、そこはクリエイターの究極というか、そういう生き方をしているからこそ傑作を生み出せることもあるから、そこは理解できるような、したくないような。
――ダメな人ほどどうしようもなく魅力的だったりしますよね。
そうですね。たしかにクリエイターで破天荒に生きている人がモテモテなのはわかるし、ある種、素敵だなと思う反面、友達には絶対なりたくないし、関わりたくないですし、恋人なんてなおさらイヤですね(笑)。正妻の美知子さんの立場になるのも無理だし…。私自身はそういうダメな人に惹かれたりすることはないですね。無理だなって思います。