Mar 24, 2017 interview

『精霊の守り人Ⅱ』の異世界音はほぼ一人の人物が担当していた!爆笑問題の太田も注目する 声の主・山崎阿弥インタビュー

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──原作をはじめアニメ版もお好きだそうですが、『精霊の守り人』の魅力と、そこに参加されたお気持ちを改めてお聞かせください。

お話を頂いたときは、「『守り人』のためにできることがあるなら、な、なんでもやりたい!させてほしい!」とドキドキして心の中で犬のようにわんわん走り回ってました。
『精霊の守り人』には不思議な力やそれを使える人が登場します。でも、主人公のバルサをはじめ、登場人物の多くは超常的な力を持っていません。心身の鍛錬や時間をかけて行う修行、研究、人からもらった思いやりや知恵など日々の積み重ねで自分を養って生きている人たちがほとんどです。特別な力を持っていると逆に苦しい境遇に陥って苛まれることもあります。 そんな人たちが出会って、各々の人生が交錯して、相手の中に自分を見つけたり、自分の中に相手を思い図ることのできる心の種みたいなものを発見しながら、一人一人が地をはうように生きています。そんな人たちに寄り添って語られる物語は、ファンタジーとはいえ、私たちの似姿や現実の映し鏡のように思えます。

とはいえ私も、子供のころスーパーマンがぎゅうっと石炭を握ってダイヤモンドにするのを見て「できるかも!」と、何回か石炭握って挫折してます(笑)。石炭をダイヤモンドにするのは無理なんですけど、かすかに存在する兆しのようなものを少しでも増幅できたら、それを足がかりにして物事の感じ方が変わったりそれまでとは異なる想像力を使えたりすると思うんです。その、ほんの少しの増幅を声で手伝えたら嬉しいです。

でもそれは私に特別な力があるということではなくて、意識を変えれば、誰しもが見えない何かに改めて気づけると信じているんです。だから、『精霊の守り人Ⅱ』を観て、私の声に対して、なにか感じてくださったり、いいなと思ってくださったりすることは、翻って、その方のなかにそれを感じ取れるなにかがあるということだと思います。私はふだん美術作品も作っていますが、それを見にきてくださる人は、自分自身に会いにきていると思っています。物語が何かを語りだしているとき、そこにはそれを作る側と受け取る側の両方の力がはたらいていると思います。そうして物語は紡がれて、一人一人にとって「自分のこと」になるのだと思うんです。

そんな冒険ができるあなたや私の生きている世の中は捨てたもんじゃない。『精霊の守り人』はそんなふうにわたしたちを見つめ返してくれる豊かな作品だと思います。

 


 

 

撮影:ナシモトタオ

撮影:ナシモトタオ

Ami Yamasaki

声のアーティスト、映像・造形作家。声で空間の音響的な陰影を感得し、パフォーマンスやインスタレーションによってその影や光を引き出す/失わせることを試みる。「世界は、私は、どのようにして出来ているのか?」という問いをもち、作品制作や歌唱をこの問いへのアクションと位置付ける。生西康典演出《火影に夢を見る》への出演、灰野敬二、坂田明、外山明、鈴木昭男、飴屋法水らとのデュオ、伊勢神宮での歌唱、中山晃子、ドローイングアンドマニュアルら映像作家との共作など分野を亘る。
2017年からは ACC グランティとして NY 市で滞在制作を行う。主な展覧会は、「Exchnage ― 種を植える」(青森公立大学国際芸術センター青森、2013年)、「Tokyo Experimental Festival vol.9」(トーキョーワンダーサイト本郷、2014年)、「第4回500m美術鑑賞」(札幌大通地下ギャラリー500m美術館、2016年)、「声の徴候|声を 声へ 声の 声と」(京都芸術センター、2016年)。
(公式サイトhttp://amingerz.wixsite.com/ami-yamasaki より)

映画もテレビアニメも好きでアニメ版『精霊の守り人』のファンでもあった。NHK制作では他に『電脳コイル』が大好き。『スターウォーズ』に出演し、英語ではなくR2D2と同じ発声で語り合う(恋人)役を本気で狙っている。

 

【インフォメーション】

山崎さんの今後の活動
◎3月26日 下北沢レディジェーン
http://bigtory.jp/live/live1703.html#0326
『精霊の守り人Ⅱ』でバイオリンを即興演奏している太田惠資とのライブ。

◎佐藤直樹「秘境の東京、ここで生えている」
http://ithasgrown.com
アートディレクター・デザイナーとしての活動を長く続けてきた佐藤直樹初の大型個展の間、2週間に1回のペースで、絵のなかを歌いながらガイドするナイトツアーを行う。

 

文・木俣冬

 

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。 ほか、ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。
現在、初めての新書を書き下ろし中。

otoCotoでの執筆記事の一覧はこちら:https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/