名言と自分を支える存在
ーー安達さんが先ほど仰ったご自身に刺さったセリフやシーンはどのあたりですか?
安達 環境が違うから日常の生活に共感できるっていうことではないけど、みんな、どこか「こうじゃなきゃいけない」と鎧を着ていると思うんです。
月に例えてのセリフじゃないですけど、「自分が欠けていると思いながら生きているけど、そうじゃないかもしれないし、そうでもいいんじゃないか?」そう言われた時の灯ちゃんのホッとする心境に共感して「私も今までの人生で、そう言って欲しかったんだ」って思えました。撮影しながら自分も救われてる気持ちになって、それに沿って灯ちゃんと重なっていく部分もありました。
ーー鹿乃子さんのあのセリフいいですよね。
安達 ね、満ちる途中だから。
倉科 そうそう。”欠けてるんじゃない。満ちる途中。きっと人生なんて、ずっとその繰り返しだ”と。
安達 よく覚えてるね。
倉科 名言なので。鹿乃子さんも言いながら、自分に言い聞かせているようなところがあるし、私自身も刺さる言葉だから、よく覚えていました。
ーー皆さんは、猫がいるから頑張れるといった、支えになる存在ってありますか?
渡邊 僕は25年間育った地元の仙台。仙台があるから頑張れるみたいなところがあります。
仙台の人たちが応援してくれるし、友達もほとんどあっちなので、帰った時に「この作品見たよ」って言われると、この仕事をやっていてよかったなって思います。
ーーでは地元が熊本の倉科さんはいかがですか?
倉科 ふたつ出してもいいですか? 猫と熊本です。
安達 熊本が好きなんだなっていうのは、すごく伝わってましたね。
ーーどういったところがですか?
安達 熊本の話が出た時の目の輝き方が尋常じゃないっていうか、すごく嬉しそうで、本当に熊本が好きなんだって感じがしたんです(笑)。
倉科 そうそう。大好きなんです。それが作品にすごく活きました。辛子蓮根を作るシーンがあるんですけど、熊本県人は、辛子蓮根にマヨネーズと七味をかけるんですよ。それを「やりましょうよ」って提案できましたしね。
安達 不思議だなと思いましたよ。辛いのに七味!?って(笑)。
倉科 いやーめっちゃスパイスがいいんですよ。
渡邊 僕は途中で帰ってくるシーンだったので、見つめていただけでした。
倉科 熊本人であることが作品に反映されたし、頑張れる存在が本当に猫と熊本なんですよ。
安達 この作品にぴったりだね。
倉科 そうぴったりで、熊本人は熊本が大好きで、熊本の人は熊本の人も大好きなんです。
渡邊 仙台とちょっと似てますね。仙台の人たちは仙台大好きですから。
ーーでは安達さん、お願いします。
安達 私は東京出身で、東京愛はあると思いますけど、今も東京にいるから、そんなに意識してない。
倉科 東京愛の話じゃないよ(笑)。
渡邊 (笑)。
安達 あぁ、頑張れる存在か (笑)。ちょうどこの作品の撮影期間にうちに猫を迎え入れることになって‥‥。
ーーたまたまなんですか?
安達 そう、知人が飼えなくなってしまい、引き取ることにしたんです。その猫が凶暴だという噂だったので、どうしたらいいのか?って倉科さんにも色々聞いたりしながら準備していたんです。タイミング的にも「この映画をやるべくしてやっているんだな」って感じましたし、実際、猫が来てみたら、ものすごい癒されてます。でも頑張れる存在ってなると、どうしても子供かな。単純に一緒にいて楽しいですし。それによって満たされています。
あと、こんな私をまともにしてくれる存在ですね。朝ごはん作って、きちんと送り出して、学校の予定、授業参観に行くとか、そういうみんながやっている普通のことをやる瞬間を子供が与えてくれているから、常識的な自分を保っていられると感じています。