原作者も太鼓判。『YAWARA!』との出会いは偶然から
古川 アニメ作品のデビュー作品は何だったの?
皆口 青二に入ってすぐに、『ボスコアドベンチャー』っていう番組でデビューさせていただきました。私も妖精のヒロインとして1年間旅をするっていうお話だったんです。山寺宏一さんもこれがデビュー作品で、1年後に作品が終わった後、2人でファミレスに行って打ち上げ旅行の旅のしおりとか作っていました。
古川 山寺さんは、『赤影』の時にオーディションの最後の2人に残って、僕か山寺さんのどちらかに決まるところだったんですよ。
皆口 その後『ねるとん』をやっている途中にオーディションがあって、『YAWARA!』という作品に出会ったんです。
平野 『YAWARA!』が決まった経緯ってどうだったんですか。
皆口 先ほどの『ボスコアドベンチャー』のプロデューサーが読売テレビの諏訪道彦さんだったんです。その諏訪さんの忘年会に毎年お誘いいただいていたんですけど、私そういうところが苦手だったのでずっと行かなかったんです。でも、ある年なんかいかなきゃいけない気がして行ったら、座った席が小学館の『YAWARA!』の編集者の方の席だったんです。そこで「『YAWARA!』っていう作品が今度アニメになるんだよ。よかったらオーディションうけてみてよ、さやかさんとかいいんじゃないかな」って話をしてくださったんです。
平野 それで『YAWARA!』のオーディションは何の役で受けたの?
皆口 柔です。忘年会の後、近所の貸し本屋さんで借りて『YAWARA!』を読んだんです。でも、その頃はアニメがとても苦手だったので、ちょっとやってなかったんです。
平野 なんで苦手だったのかしら?
皆口 画に演技が合わせられないし、下手だし、もう皆さんにご迷惑かけるから。実は、事務所にお願いしてアニメのお仕事はちょっと止めていた時期だったんです。でも『YAWARA!』の原作を読んだら、とても普通の女の子で、この子が出来なかったら、私一生アニメのお仕事はできないなって思ったので。
平野 それは何かひらめいたのね、自分の中でやりたいっていうので。
皆口 漫画がすごく面白くって、これは、やりたいなって。
古川 実は『YAWARA!』のプロデューサーの丸山正雄さんに、ちょっと伺ったことがあったんですよ。「どうして皆口さんが主人公の柔役に決まったんですか」って。そしたらね、「小器用なうまいテクニカルな声優はいっぱいいるんだけど、そういうんじゃない新鮮な感じが良かった」と。
皆口 ほら、やっぱり素人っぽいんですよ(笑)、全部そうなんですよ。
平野 柔ちゃんの役はそういう感じだから。
古川 『ねるとん』の話にも繋がるんだけど、新鮮な感じがするんだよ。
皆口 そのときの『YAWARA!』の監督が”ときたひろこ”さんという方だったんですけど、オーディションの最後に何人か残った中で、ときたさんが「私はこの何か下手くそみたいなこの子じゃないと嫌かな」って言ってくださったみたいで。やっぱりその下手くそとか素人っぽいっていうのがいつもポイントなんです、私。
平野 原作者の浦沢直樹先生はどういう反応だったんですか?
皆口 役が決まった後にお会いさせていただきました。浦沢先生は「できれば何かの役をやっていた声優さんっていうよりも、柔が初めてぐらいで、皆さんにまだ知られてない、そういう人がいいな」って思っていたとおっしゃっていたんです。「例えて言うなら『ねるとん』のほらなんか素人っぽい子いたじゃん」っていう話になって、「先生、それ私です」って言ったら「えぇ〜」って(笑
平野 浦沢先生も本当に自分のイメージ通りの声があの『ねるとん』の声だったのね。
皆口 「あれ皆口さんだったの!」って浦沢先生もびっくりしていましたけど、私もびっくりでした。