- 古川:
そんな初期の作品で特に記憶に残ってる作品ってどれですか?
- 小山:
やっぱり「ニルスのふしぎな旅」(1980~1981年)かしらね。この作品で初めて男の子役をやったんですよ。録音監督の斯波重治さんに抜擢していただいて、主役のニルス役をやらせていただくことになりました。それで「なんで私なんですか?」って聞いたら、当時やっていたコマーシャルの私の声を聴いて決めたって言うんです。
- 平野:
どんなコマーシャルだったの?
- 小山:
カネボウ化粧品のコマーシャルで、夏目雅子さんが砂漠の向こうからラクダにのってやってくるっていう内容なんですが、最後に大きな声で「クッキーフェイス!」って叫ぶんです。実はその声が私だったんですよ。斯波さんがそれを聞いて、男の子役をやらせてみたいって思ったそうで。
- 古川:
ニルスの声には、当時、「チャーリーズ・エンジェル」(1976~1981年)で茉美ちゃんが演じていたクリスのニュアンスがありましたね。エンジェルの末妹で、すごく可愛かったんだ。
- 平野:
「チャーリーズ・エンジェル」には憧れてました! 出てくる女性がみんな色っぽくて、でも爽やかで。茉美ちゃんみたいな声で演技したいっていつも思ってた。
- 古川:
僕は、そこからクリス役のシェリル・ラッドの大ファンになってしまって、ブロードウェイまで彼女の芝居を見に行きましたよ。「アニーよ銃をとれ(Annie Get Your Gun)」の主役をやっててね。目の前で見る本物は、ブルーの瞳がすごく綺麗だったな~。
- 小山:
私も、彼女が日本に来たときにお会いしました。「マイボイス、マイボイス」って抱きしめてくれてすごく幸せだった~。とってもチャーミングな人ですよね。
- 平野:
『機動戦士ガンダム』(1979年)のキシリア・ザビ役は、そんな洋画吹き替えで培ったテクニックが活かされたのかしら?
- 小山:
キシリア役も、ニルスと同じく「なんで私なの?」って思った役です(笑)。彼女の設定は当時の私と同じくらいの年齢だったんだけど、見た目はどう見ても老けたオバサンじゃない? 言葉使いもなんだか難しいし……それで、富野監督を捕まえて「なんで私がキシリア役に起用されたんですか?」って聞いちゃったの。
そうしたら「キシリアはこんな怖そうな外見で、性格もすごくキツいでしょう? だからそれとは正反対の“かわいい小山茉美”にやらせてみたかったんだよ」って……全然納得できませんでした(笑)。最後まですごく難しかった。
- 古川:
でも僕はキシリア好きだったな。すごく悪役っぽく描かれているけど、あれはザビ家のことを真剣に考えていたからなんだよね。お父さん思いの女性なんだよ。それで最後にギレンを……ってことになっちゃうんだけど、アレは兄貴が悪いよ(笑)。
- 平野:
ガンダムの時は、2人はよく話していたの?
- 古川:
僕はあんまり仲良くしたいタイプの人間じゃないから、ぜんぜん話しかけてもらえなかったんですよ……。
- 小山:
もう、そういうこというのやめてよ!(笑)
- 古川:
いやでも実はあの当時の僕は、小山茉美のことを憎からず思っていたんですよ。だって、可愛かったもん。みんなが狙ってたんじゃないかな(笑)。ところで知ってます? 僕と茉美ちゃんは、「青二のゴールデンコンビ」なんて言われていたんですよ。主に僕が言ってたんですけど……。
- 小山:
……そんなにご一緒してましたっけ?
- 古川:
ひどい!「ムーの白鯨」(1980年)とか、「Xボンバー」(1980年)とか、いろいろ一緒にやってたじゃない。「Dr.スランプ アラレちゃん」(1981~1986年)にも空豆タロウ役で出てたのよ?
- 小山:
ごめんなさい、ごめんなさい(笑)。でも、当時はそれくらい必死だったのよ。なぜかお仕事だけはたくさんいただけるんだけど、余裕がないから自分のことだけで精一杯だったの!
- 平野:
そして、ガンダムの後、1981年にいよいよ「Dr.スランプ アラレちゃん」がスタートするのよね。ちょっと話は飛ぶんだけど、この間、「ドラゴンボール超」(2015年~放送中)にアラレちゃん役で出てたじゃない? すごいびっくりした!35年前と全然声が変わってないって大評判だったけど、声を維持する秘訣とかってあるの?