Jan 29, 2024 interview

この役で嫌われたなら本望だ。『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』須賀健太インタビュー

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主人公は仇であってヒーローでもある

ーードラマのSeason3内でシンジが首藤の息子であることが明かされましたが、彼らの親子関係について、詳細は描かれませんでした。今回、改めてシンジを演じるにあたり、その設定をどう組み立てて演じられたんですか?

シンジが一番取り憑かれていたのは、親子というより研究者として父を超えたいという部分だったと思います。そこを短い時間で表現できるようにしました。

多分、シンジは親から愛情を注いでもらって育った人間ではなかったと思うので、何か自分の存在意義みたいなものを示したかっただろうし、残さないといけないと思っていたんでしょうね。ある意味、すごく切ない部分のある人物なので、そこは大切にしたかったんです。

実際、監督と深く話して、バックボーンをしっかりと組み立ててやったわけではないんです。僕自身も決めすぎない方が、現場で面白いものが出るかな?っていうのは、今回すごく意識していました。

ーーでも、主人公の響は父の仇でもあるわけですよね。

もちろん、親を殺されているっていう面もあるんですけど、それで響に執着してるというよりは、研究の材料を奪おうとする者という側面が大きいと思うんです。父親にまつわる因縁というより、今回は最終的に、響との間に生まれた話だと見えたらいいなと考えていました。

だから”響と対峙した時にどんな顔するんだろう?”って、僕自身もすごく楽しみにしていたところがありました。結果的にそのシーンでは、笑うっていう方が強く出ました。

他にも響のことを呼ぶとき、台本では全部「間宮」って書かれているんですけど、最初は「間宮さん」って呼んで、ちょっとしたシンジの中での遊びの部分を表現したりして、呼び方ひとつとっても意識していました。

ーーなるほど。

シンジの中で、響はヒーローだったのかもしれません。かつて勇敢な姿を一番近くで見ていたシンジにとって、響はある種、尊敬の対象でもあったからこそ壊したい、みたいな複雑な気持ちを持っているところが、キャラクターとしてあったらいいなと思って演じました。

ーー確かに物語のクライマックスでは、コンプレックスも含めた、いろんな感情で揺れているシンジがとても印象的でした。

僕もそのシーン好きです。この作品に関わる全ての俳優はみんな、演じる人物の死という終わりを意識して、各々演じていると思います。僕は、この作品に参加する時に”自分はどうやってこの世界で死ぬのかな?”って、一番に考えました。そういう意味で、今回の僕としての「君と世界が終わる日に」という物語の終わり方は、すごく面白くて好きです。

ーー劇場版では「10年後の未来に何をしてますか?」というセリフで始まります。俳優だけでなく舞台演出も手がけていらっしゃる須賀さんは10年後、何をしていますか?

10年前、自分が舞台演出していると思ってもみなかったし、いまは日々物事が急速に変わっていく時代でもありますから、本当に想像がつかないですよね。それこそ「ハイキュー!!」という舞台で主演をさせてもらった縁もあって演出をさせてもらいましたが、そういった繋がりで立ち上げた劇団ハイキュー!!も、10年前はまだ始まってもいなかったですし。

この世界に入ってもう26年経ちますけど、ものづくりを楽しむということは唯一変わってないところです。

年齢を重ねても、そこはブレていないので10年後も変わってなかったらいいなと思うし、演出も続けていけるのであれば、もちろんやりたいです。肩書きが違っても、ものづくりが出来ていたらいいなと思っています。

取材・文・構成 / 小倉靖史
撮影 / 藤本礼奈

スタイリング / 立山功
ヘアメイク / 松田蓉子

作品情報
『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』

希望の塔ユートピア。しかしそこは、人間の欲望が生み出した絶望の塔だった。ユートピアではこの世界を救い出す唯一の方法、ゴーレムと呼ばれる化け物に対するワクチンを研究していた。特殊な抗体を持つ一人の少女を研究材料にして‥‥。少女の名前はミライ。間宮響の娘。響はユートピアに集った5人の男たちと共にミライを救い出す決心をする。父親として覚悟を決めた響。自らの命よりも大切な子供への想いを胸に、襲い掛かるゴーレムたちと戦い続ける。響には最期が迫っていた。

監督:菅原伸太郎
脚本:丑尾健太郎
出演:竹内涼真、高橋文哉、堀田真由、板垣李光人、須賀健太、味方良介、黒羽麻璃央、吉田鋼太郎

配給:東宝

©2024「君と世界が終わる日に」製作委員会

全国東宝系にて公開中

公式サイト kimiseka-final