Dec 15, 2022 interview

岸井ゆきのインタビュー 映画との対話、熱量がほとばしる『ケイコ 目を澄ませて』

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もっと人と話さなきゃいけない

ーー 撮影はいつごろ行われたんですか? 

コロナで延期になって、2021年の3月に3週間くらい撮影していたと思います。

ーー 体感的に長かったですか? 短かったですか?

1日は長かったけど、もうその3週間はあっという間に終わってしまいましたね。

ーー 撮影期間は、お家に帰ってもボクサーと同じような暮らしをされていたんですか?

撮影中は家に帰っても筋トレをしていました。階段登るのとかもきつかったんですよ、糖質制限で(笑)。頭は回らないし、身体は重いし、増量しなきゃいけないので常にお腹がいっぱいだし。でもそれが苦ではなかったです、幸せだったので。

ーー 他にお仕事はされてたんですか?

やってないです(笑)。身体も違うので、この作品しかやってなかったです。

ーー 本作の舞台は2020年末の東京です。みんながマスクをしているコロナ禍で、ケイコが「人は一人でしょ?」と言い、自分の悩みを人に相談することを避けます。人間関係が希薄になりそうだった時期に、岸井さんは、どのように人とコミュニケーションを取っていましたか?

コロナ禍以前に、休日には映画館に通って、家でも映画を観てるんですよ、ずっと昔から。

映画っていくらでも一人で沼に落ちることができちゃうんです。映画ってスクリーンの中で人が喋ってるじゃないですか。そうすると私もそこに参加してるような気分になっちゃうんです。

国が違ったり、現代ではなかったりするのに、なぜか喋った気になってしまうんですよ。それでうまく人とコミュニケーションを取っているような気分になってしまってました。

ーー 観ているだけでなく映画と会話してるんですね。

あと俳優の仕事をしていると、いろんな出演者やスタッフの方と友達以上に濃厚な時間を過ごしているかもしれないですから、そこでもコミュニケーションを取っている気になっていたんですよね。

コロナで撮影が延期になって、映画鑑賞しかしていないとなったとき、「ああ、私コミュニケーション取っていなかったんだ」って気づきました。

10言えば10分かってくれるような古い友人関係だけでは良くないなと、今回感じたので「もっといろんな人と話そう」って思っています。

取材・文・構成 / 小倉靖史
撮影 / 曽我美芽

作品情報
映画『ケイコ 目を澄ませて』

嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す。

監督:三宅唱

原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)

出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子、仙道敦子 / 三浦友和

配給・ハピネットファントム・スタジオ

©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

2022年12月16日(金) テアトル新宿ほかにて全国公開

公式サイト happinet-phantom.com/keiko-movie/