Dec 15, 2022 interview

岸井ゆきのインタビュー 映画との対話、熱量がほとばしる『ケイコ 目を澄ませて』

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映画が大好き

ーー 本当に映画好きですよね。SNSを拝見すると劇場公開したら早い段階で観に行ってますよね。

すぐにでも行きたいですね。もう映画館に住みたい(笑)。

ーー 最近のお気に入りの作品はなんですか?

今年でいうとギヨーム・ブラック監督の『みんなのヴァカンス』(2022年8月公開)は、本当に素晴らしくて大好きです。一番最近だと、コゴナダ監督の『アフター・ヤン』(2022年10月公開)が面白かったですね。前作の『コロンバス』も好きで。なんか言葉と映像が重なっていく映画は好きですね。

あとハーモニー・コリン監督の『ビーチ・バム まじめに不真面目』(2021年4月公開)とかもそうなんですけど、私、割と心の中があんなふうになってるので‥‥。

ーー そうなんですか?

はい(笑)。映像と考えてることが必ずしも一緒じゃないというか、思い出してる場面のなかで喋っている人の映像が、そのまま再生されるわけじゃなくて、印象的だった人の動きと言動は、別で流れている感じです。

『アフター・ヤン』の映像と言葉の重なり合いは、私の頭の中でいうと、風景と一緒に想いが字幕で流れてる感じですごく好きでした。

ーー 本作『ケイコ 目を澄ませて』全体をとおして印象的だった、好きなセリフ、シーンはありますか?

全部。全部でこの映画がなりたってますからね、強いてひとつ挙げるなら佐藤緋美くんの歌が流れるシーンが好きですね。いつの出来事か分からないけど、ケイコにこういう生活があったという点描があるところは好きです。

ーー 今回、16ミリフィルムでの撮影でしたが、映画好きの岸井さんからしたら、ワクワクしませんでしたか?

この時代に長編映画をフィルム撮影できることは、スタッフィングも含めて、本当にありがたいことだし、とても光栄なことだとは思ったんですが、一番最初の感想は「大丈夫かな? 果たして、私にできるんだろうか?」でした。

フィルムで撮影することが決まったのが、ボクシングの練習を始めたばかりのころだったので、一発、ほぼその瞬間で決めないといけないんだな、ということを考えるとデジタルに慣れてしまってる分、恐怖心がありました。

それを三宅監督にお話したら、「体力的な意味でも何回も演らせない」とおっしゃって、反対にデジタルだったら何度も撮影してしまうことを心配されていたようです。フィルムには制限があるから、「この瞬間、全員が全力を込めれるように、という意味でもフィルムがいいんじゃないか」と言われて、私にかかってるなと思いました。

ーー フィルムでの映画撮影は今回が初めてですか?

NDJCの企画で佐藤快磨監督の『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(2016年)に出演したときに、35ミリフィルムで撮ったことがあります。そのときは、短編で結構セリフも動きも多い作品だったので、フィルムの音を注意深く聞かないと感じられなかったんです。

今回は口語のセリフがない撮影で、フィルムが回る音が聞けるんじゃないかっていうのは、興奮しましたし、楽しみのひとつでもありました。

ーー お芝居をしながらフィルムの音を聞いてたんですか?

それしか聞いてなかったですね。フィルムの音を聞く事で外野の音が聞こえないという状態に、たどり着くことができました。

ーー ものすごい集中力ですね。

当時は、アトム級(女子の最軽量の階級)に体重が届かなかったので、増量しながらの糖質制限していたんですね。糖質制限をすると脳が回らなくなって、見たいもの聞きたい事しか感じなくなって、すごく狭い世界になってしまうんです。それが普段の生活だったらきついんですけど、ケイコという役にフィットしていたかなと思います。