Sep 15, 2017 interview

【いのうえひでのりインタビュー】小栗旬、阿部サダヲ、松山ケンイチ・・・豪華キャストとまわり続けるマラソンも3周目に

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豊洲にできた新しい劇場〈IHI ステージアラウンド東京〉で劇団☆新感線が、偉業に挑んでいる。新感線の代表作にして人気演目である戦国時代活劇『髑髏城の七人』を、“花・鳥・風・月”そして、さらに極の5つのシーズンでロングラン公演を行っているのだ。
“花”は小栗旬、“鳥”は阿部サダヲ、“風”は松山ケンイチ……とキャストも豪華。彼ら出演者に合わせて、物語や演出が変わっていくので、毎回、新鮮な発見がある。こういった趣向は、観ているほうはひじょうに楽しいが、やっているほうは相当大変である。“花・鳥・風・月・極”のすべてを演出するいのうえひでのりに、この試みと、劇場の中央に配置した観客席が360°回転しその周りをステージが取り囲む作りで、観客が体感できる“没入型エンターテインメント施設”と言われる新劇場の魅力について、聞いてみた。

 

血を吐きながらまわり続けるマラソン

 

──『髑髏城の七人』Season鳥も面白かったです。

“鳥”は、歌が多く入ったり、シリアスな話の中に、突然強引のネタが入ったりするところが、昔の新感線を彷彿とさせるという声も多く、好評でした。

 

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(C)2017『髑髏城の七人』鳥、【撮影:田中亜紀】

 

──懐かしい感じもありながら、歌って踊って楽しんでいるシーンに切なさも入ってきて、僭越ながら、昔よりも成熟されているように思いました。

基本的には少年漫画の世界ですが、森雪之丞さんが良い歌詞を書いてくださったことも大きいと思いますし、伊達に何年もやってないっていうのもありますよね。逆に、何年も(初演は90年)、何回もやり過ぎて、さすがにもういいだろうという気もしますが(笑)。

──何度やっても、その都度楽しませてもらっています。しかも、すべて演出は、いのうえさんであることがすごいです。

世界観が特殊過ぎて、新解釈みたいなものは難しい作品だから、なかなか他の人にはやってもらえないでしょうね。例え、他の演出家がやっても、新感線風をコピーするしかなくて、それ以外のアイデアを受け付けない感じがします。

──シェイクスピアのように、いろいろな演出家の解釈で作ることは難しい?

そうですね。やっぱり新感線という形でやるのが正解なのかなって。もちろん、本当は、今後、新しい解釈でやってくれる人に出てきてほしいですけれど。

 

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──どなたか、出てくるまでに、いのうえさんがいったい何パターンやれるか。

“花・鳥・風・月・極”までやったら、しばらくもうアイデアは出ないですよ(笑)。もうこれで十分な気がするなあ。今度の“Season風”は、同じ顔の男設定でひとり2役が、初期にやって以来なので楽しみですが(古田新太が主演した初演は、捨之介、天魔王の2役を古田がやった)、基本は同じ話です。毎回、キャストに合わせて、中島かずきさんに若干、話を変えてもらっているものの、劇場は同じIHIステージアラウンド東京なので、見せ方にも限りがありますよ(苦笑)。

──“花”と“鳥”は楽しませていただきましたが。

これから、徐々にネタがなくなっていくことを、お客さんは目の当たりにするでしょう(笑)。

──“風”“月”“極”と次第に疲弊していくと。

血を吐きながらまわり続ける、悲しいマラソン(ウルトラセブンに「血を吐きながら続ける、悲しいマラソン」という台詞がある)のように(笑)。

──まさに劇場が。

まわってるから(笑)。