観る人が気づきを得られるような映画を作りたい
池ノ辺 監督はもともとはイベントディレクターとして活動されていたんですよね。そこで経験されてきたことは今回の映画作りにも生かされているんですか。
中川 イベントも映画も、やはりいろんなプロフェショナルが集まって一つの作品を作るというところでは同じですね。全員で同じ方向を向くためには情報共有が大事とか現場でのコミュニケーションはどうするかとか、そこは全く同じなので、そういう意味ではイベントディレクター時代のキャリアも役に立っていると思います。

池ノ辺 もともとは映画監督になりたいと思われていたんですか?
中川 最初から、というわけではなかったですね。イベントの仕事をしているうちにそう思うようになったんです。イベントというのはライブコンテンツなので、ちょっとトラブルが起きても途中では止められないんです。もう突き抜けるしかない。だからディテールにはこだわれないというところがあります。だからこそのダイナミックさ、面白さもあるんですが、僕はどちらかというと細かいところにこだわりたいタイプなんです。それでちょっと映像の世界に足を突っ込んで映画に触れてみたらめちゃくちゃ面白かった。そこから映画の勉強を始めて今に至るというところです。最初から映画監督になろう、映画を作りたいと思って始めたわけではないので、そこはちょっと変わったキャリアかなと思います。

池ノ辺 ではそんな監督にとって、映画ってなんですか。
中川 それは難しい質問ですね‥‥まだ勉強中の身にとっては一言でうまく言えないんですが、僕は、その映画を観て、何かの気づきや学びを得たり、価値観が変わるような経験をさせられる、そんな映画が好きなんです。それが映画だとするならば、僕にとっての映画は学びでしょうか。ですからそういう学び、気づきを与えられるような作品を作りたいということは意識しています。
池ノ辺 5人の若手俳優さんたちの未来に期待していますが、監督の次の作品も楽しみにしています。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
監督
1987年生まれ。大学卒業後、イベント制作会社を経て独立。イベントディレクターとして活動する傍らで、ニューシネマワークショップにて映画制作を学ぶ。自らが脚本・編集・監督した短編『カランコエの花』(2016)はレインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でグランプリを受賞したほか、国内の映画祭を席巻。現在でも多くの企業や教育機関研修等で教材として、LGBTQの理解促進に貢献している。その他、過去の監督作品は『time』(2014)、『尊く厳かな死』(2014)、『UNIFORM』(2018)、初の長編監督作『少女は卒業しない』(2023)など。

みんなには隠している、少しだけ特別なチカラ。それぞれの“かくしごと”が織りなす、もどかしくも切ない物語。「自分なんて」と内気な高校生・京は、ヒロインじゃなくてヒーローになりたいクラスの人気者・三木が気になって仕方がないが、いつも遠くから見つめるだけ。そんな三木と幼馴染であり京の親友・ヅカを通して、卒業まで“友達の友達”としてずっと一緒にいるはずだった‥‥。
監督:中川駿
原作:住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮文庫刊)
出演:奥平大兼、出口夏希、佐野晶哉(Aぇ! group)、菊池日菜子、早瀬憩
©2025『か「」く「」し「」ご「」と「』製作委員会
©2017住野よる/新潮社
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