May 31, 2025 interview

中川駿監督が語る ちょっと不器用で、とびきり愛しい5人の物語 ―『か「」く「」し「」ご「」と「』

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「自分なんて」と引け目を感じている高校生・大塚京(奥平大兼)は、ヒロインじゃなくてヒーローになりたいクラスの人気者の三木直子・通称ミッキー(出口夏希)が気になって仕方がない。予測不能な言動でマイペースな黒田・通称パラ(菊池日菜子)と一緒に、明るく楽しそうにしている彼女を、いつも遠くから見つめるだけ。そんな三木の幼馴染で京の親友の、高崎博文・通称ヅカ(佐野晶哉)を通して、卒業するその日まで “友達の友達” として一緒にいるはずだった。ところがある日、内気な性格の宮里・通称エル(早瀬憩)が、学校に来なくなった。そのことをきっかけに、5人の想いが動き出すーー。

映画化もされた衝撃のデビュー作「君の膵臓を食べたい」の住野よる のベストセラー小説「か「」く「」し「」ご「」と「」の実写映画化が実現。トップ俳優への階段を登り始めた5人が、それぞれのキャラクターを生き生きと演じる、愛すべき青春ラブストーリーがここに誕生した。脚本・監督は中川駿。細部にまでこだわった映像で、唯一無二の世界観をスクリーン上に展開してみせる。


予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ
!』、今回は、『か「」く「」し「」ご「」と「』の中川駿監督に、本作品や映画への思いなどを伺いました。

原作者の思いを形にする

池ノ辺 本作は、住野さんの原作の映画化ですが、お話がきた時にはどういう思いで引き受けられたんですか。

中川 映画化のお話をいただいて、まず原作を読みました。物語には頭の中でいろいろ考えてちょっと拗らせてしまっているような人物たちが登場していて、しかもその彼らの思いについてすごく繊細な心情描写がされているんです。これを単純に映像化するのは難しいだろうなとは思いました。頭の中を写すことはできないですからね。それと、彼らの持つ「特別なチカラ」をどう描くかという難しさもありました。そのまま描いてしまうとファンタジーみたいな感じになってしまって、リアルな世界観から乖離していってしまうという懸念がありました。

けれど、ストーリー全体でいうと、一見ファンタジーのようで、実は、10代の男の子たちや女の子たちが陥ってしまいがちな心情、つまり自分と他人を比べて自信を無くしてしまったり、不安になってしまう、そういう気持ちが丁寧に描かれていた作品だったんです。今の社会に大切なことが描かれていると思うし、この時代だからこそ発信する価値のある内容だと思ったので、難しさを感じつつも、これは大きなチャレンジだと思って引き受けさせていただきました。

池ノ辺 脚本も監督が書かれていますよね。そこの難しさはどうでしたか。

中川 脚本を書くにあたって難しかったのは、原作者の思いをどれだけ忠実に再現できるか、形にできるかというところですね。原作者の住野先生は、本当に原作に対する愛情が深い方で、ストーリー、あるいはキャラクターのディテールにこだわりを持ってらっしゃる方でしたので、まずは僕がプロットなり脚本なりでこういう形でどうですかと提案させてもらいました。それに対して先生が、このキャラクターはこういうことはしない、こういう言い方はしないというような細かいオーダーをしてくださるんです。とはいえ、映像化するにはここはこうした方がいいかなという僕の思いもあります。ですから、双方が納得できるような形での落とし所というか選択ができるようにコミュニケーションを重ねていく、その過程が一番難しかったかなと思います。

池ノ辺 住野先生は、見た目も含めてのキャラクター像を大事にしておられたそうですね。身長も指定されたとか。

中川 身長というより、その関係性を踏まえた上での身長の設定ですね。例えばパラはミッキーよりもちょっと背が高くて大人な印象がいい。一方エルは、一番幼く小さい感じがいい。ヅカと京くんに関しても、ヅカの方が京くんより弱く見えてはいけないので、ヅカの方が大きくなければとか、そういう印象のところを大切にされていました。

池ノ辺 そうしたこだわりの結果だと思うんですが、5人それぞれのキャラクター、お互いの関係性などが、すごくわかりやすく伝わってきました。