映画だからこそ伝えたいこと
池ノ辺 予告編を作らさせていただいたんですが、松重監督からは担当ディレクターに非常に明確な指示をいただきました。
松重 「孤独のグルメ」そのものの周知というのは、テレ東で年末年始に、もうこれでもかというくらい再放送をやっています。宣伝の方向性ということにおいて、これを見飽きている人たちにとって、劇場に行くとはどういうことか、その人たちの足を劇場に向けさせる意味はどこにあるのか、宣伝をする上でそこをきちんと訴えなければいけないと思ったんです。
池ノ辺 つまり、単純に食べているのが美味しそう、というだけの話ではないということですね。
松重 今回の年末スペシャルに関しては、自分も企画プロデュースに入ってやってきましたから、僕からたくさんアイディアを出して話を作りました。つまり、映画は「食べ物を通して人とつながっていく、食べ物が人をつないでいく」、そういう物語だぞと、そういうヒントを与えてくれるような予告編であったり前哨戦の年末スペシャルなわけです。そこはきちんとアピールしておきたいと強く思っていたので、東宝の宣伝プロデューサーともきちんとお話をしました。
池ノ辺 監督だけではなく、プロデューサーのようですね。
松重 そうですね、今から思えば、この映画に関わってしまった俳優 松重豊、それを前面に出しながら、トータルで「孤独のグルメ」というものを映画にするために動いていたんだと思います。それは、今までテレビドラマとしてしか知らない人に映画の世界を伝えること。映画というのは僕が40年間関わってきた現場です。つまり、「孤独のグルメ」というコンテンツを使って、現場とつながることで伝えたい世界を表現するというところにまで行くわけです。それは監督的な作業というよりプロデューサー的な作業です。特に後半は、監督としての作業は終わっていますから、宣伝としての作業に専念する感じでした。