Jun 10, 2023 interview

原作者・田島列島が語る マンガでは表現しきれない 映画的な映像が良かった『水は海に向かって流れる』

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カラフルな映像と豊かな言葉

池ノ辺 本作は、映像もすごく美しかったし、原作のイメージがそのままカラーになっているという感じがしました。

田島 カラフルな映像になっててよかったです。私がマンガで描いているときには、特に実写になったらどうかとか考えていませんし、映画になるという話が来たときにも、いい映画になればいいなというくらいの気持ちだったんです。でも実際に観てみたらすごく良くて、前田監督の映画は本当に色使いがきれいでよかったと思いました。 

池ノ辺 事前に監督といろいろ話をされたんですか。

田島 お話はしましたが、そんなに私から何かを注文することはなかったです。

池ノ辺 前田監督とは、別の作品でお話しする機会があったのですが、そのときにも、色を大切にしているということをおっしゃっていたんです。本作では、家の中やインテリアとかもすごく素敵ですよね。

田島 そうなんです。もう可愛くて、あそこに住みたいくらいですよね(笑)。

池ノ辺 役者さんたちの印象はいかがでしたか。

田島 みんなよかったですね。大西さんも、高良(健吾)さんも、最初かっこよすぎじゃないかと思ってましたが(笑)。

池ノ辺 みなさん、それぞれすごく個性的に演じられてましたよね。主演の広瀬すずさんはどうですか。

田島 きれいでしたねえ。特にあの海のシーンの横顔なんか、本当にきれいで。ちょっと前まで少女の役を演じていたすずさんが、大人になって、大人のお姉さん役をやって、その少女から大人への移り変わる瞬間のきれいさを、私の原作の映画で残してくれたのが、とてもよかった。嬉しいと思いました。

池ノ辺 本作の宣伝プロデューサーからも、今回のすずさんは“大人のすずさん”ですよと聞いてはいたんですが、本当に表情や仕草の一つ一つに、素敵な女性になったのが表れていましたよね。ところで、本作の中で、田島先生の好きなシーンはどこですか?

田島 最後の直達が走っているところです。マンガでは表現しきれない、いかにも映画的な映像で、映画のラストとしてぴったりな感じもよかったです。

池ノ辺 予告編を担当した男性ディレクターと今回のインタビュー前に話をした時、彼の中ですごく心に残っているのが、千紗が「私は一生恋愛はしない」と言ったことに直達くんが「僕もしません」と。それに千紗が「バカじゃないの」と返す。その言葉の一つ一つに、恋愛というよりも人間のやさしさとか豊かさとか、相手の立場に立ったところから相手を思いやることのできる、そんな心が表れていて、それがこの原作にも映画にも表現されているのがよかったんだと言っていたんです。それには私もすごく共感しました。原作を描かれていた時もそういう意識をされていたんですか。

田島 そうですね、私が描いていたときには正直そこはあまり意識していなくて、むしろ、あの2人の間にあるヒリヒリするような緊張感、2人の関係にハラハラするとか、そういうところを意識していました。