自分が楽しむ。そして撮影現場のライブ感を表現したい
池ノ辺 監督は子どもの頃から監督になりたかったんですか。
渡辺 大学に行って就職の時に何をしようかと考えたときに、映像に携わる仕事をしたいなとは思っていました。もちろんテレビっ子でしたから、当時全盛だった特撮ものやヒーローものが大好きでしたし、テレビで放映される映画もよく見ていました。それで大学進学で東京に出てきてからは、授業に行かないで映画ばかり観ていました。ただ、実際に自分がその仕事をするというイメージは就職を決めるギリギリまでなかったんです。それでも、結局好きなものに関わる仕事がしたいと思って、こういう仕事に就くことになりました。
池ノ辺 NHKでも素晴らしいお仕事をたくさんされていますね。
渡辺 ありがとうございます。
池ノ辺 監督が映像をつくる際に、何かこだわっていることはありますか。
渡辺 撮影の場で自分が楽しくなることでしょうか。自分が楽しくないといい芝居は撮れないと思うんです。そこで起きていることをどう楽しんで、楽しんだものを演者さんやスタッフたちにどう伝えるか。そして、最初から決められているものをその通りにやるのではなく、撮影現場でのライブ感というか、その日その時間、その場でしか撮れないものは何か、そういうことはいつも考えていることです。
池ノ辺 最後になりましたが、監督にとって映画って何ですか。
渡辺 そもそも映画と出会わなければ、自分はこうした仕事をしていないでしょうし、例えば大変なことがあったり辛いことがあったりしたときに、映画を観て、そこからリセットして、もう一度やる気を出して、という力があると思うんです。今、自分がそういう影響力のある表現媒体の一端を担えるというのはとても光栄だと思っていますし、これからも機会があればどんどん携わっていきたいと思います。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 藤本礼奈
監督
1969年生まれ。1991年にNHKに入局後、数多くのテレビドラマ作品を手掛ける。現在はNHKエンタープライズに所属。主な演出作品に「監査法人」(08)、「リミット -刑事の現場2-」(09)、「龍馬伝」(10)、「平清盛」(12)、「お葬式で会いましょう」(14)、「まれ」(15)、「おんな城主 直虎」(17)、「浮世の画家」(19)、「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」(20)、「おもひでぽろぽろ」(21)、「雪国 -SNOW COUNTRY-」(22)、「岸辺露伴は動かない」(20-22)などがある。本作で初めて劇場公開映画の監督を務める。
特殊能力を持つ、漫画家・岸辺露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。それは最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった。時は経ち、新作執筆の過程で、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は取材とかつての微かな慕情のためにフランスを訪れる。しかし、不思議なことに美術館職員すら「黒い絵」の存在を知らず、データベースでヒットした保管場所は、今はもう使われていないはずの地下倉庫「Z-13倉庫」だった。そこで露伴は「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することとなる。
監督:渡辺一貴
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(集英社 ウルトラジャンプ愛蔵版コミックス 刊)
出演:高橋一生、飯豊まりえ、長尾謙杜、安藤政信、美波 、 木村文乃
配給:アスミック・エース
©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
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