May 27, 2023 interview

渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

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特殊能力を持つ人気漫画家・岸辺露伴(高橋一生)は、青年時代に淡い思いを抱いた女性・奈々瀬(木村文乃)からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。それはこの世で最も黒く最も邪悪な絵だった。あるとき、その絵がルーヴル美術館にあることを知った露伴は、取材とかつての微かな慕情のためフランスを訪れ、「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することになる。

荒木飛呂彦の大人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」から生まれた傑作スピンオフ「岸辺露伴は動かない」は、2020年に高橋一生を主演に実写ドラマ化され反響を呼んだ。その制作チームが日仏を股にかけ、美の殿堂ルーヴル美術館を舞台に展開される初の劇場長編映画に挑む。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の渡辺一貴監督に、ルーヴル美術館での撮影の様子、映像作品への想いなどを伺いました。

岸辺露伴が現実にルーヴルへ行くという奇跡

池ノ辺 渡辺監督は、ずっと人気テレビドラマシリーズ「岸辺露伴は動かない」を手がけてこられて、今回満を持して『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の映画化となったわけですが、実際その話が来た時はどうだったんですか?

渡辺 2020年の夏にテレビシリーズの1期を撮影していたんですけど、その頃から一生(高橋)さんたちと雑談で、「「ルーヴル〜」を映画でできたらいいよね」みたいな話をしていたんです。ただ、その頃は本当にただの雑談、夢のまた夢で実現性の全くないものだと思っていました。それが、1期の放送が終わった後、21年のはじめにアスミック・エースさんから、「映画化しませんか」というお話をいただいたんです。しかも先方も「「ルーヴル〜」どうですか?」ということだったので、これはもうご縁だと思いました。

池ノ辺 最初から「ルーヴル美術館で撮影できるぞ!」という感じだったんですか。

渡辺 当初は、ルーヴル美術館で撮影するというよりは、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を映像化できる、というのが真っ先にあって、物語はパリパートだけではないですし、若い頃の露伴の造形をどうしようかとか、いろいろ考えなければいけないことがたくさんあって、実際にパリに行ってルーヴルで撮影をするという具体性にまでは思い至っていなかったんです。しばらくしてから「考えてみたら、ルーヴルで撮影するってすごいことだけど、本当にできるのかな」とじわじわと感じてきました。

池ノ辺 私も、ルーヴルでの撮影といってもせいぜい画のなかに外観を入れるくらいなんじゃないかと思っていたら、館内での撮影もあると聞いて、本当に驚きました。実現させるまでは大変だったんじゃないですか?

渡辺 それは僕というよりはプロデューサーの方たちががんばって交渉してくださって成立したことです。実は原作では、ルーヴルでオフィスからすぐに「Z-13倉庫」に行ってしまって、館内の描写は少ないんです。でもせっかく行くのなら皆さんが思い描くルーヴルの雰囲気もしっかり出したいと思って、追加でいろいろお願いしてしまいました。それも含めてルーヴル側との調整は大変だったと思います。