Jan 14, 2023 interview

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

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キャスティングと演出で生きた “ダメな親子”

池ノ辺 役者さんも素晴らしかったですね。藤ヶ谷くん、前田敦子さん、中尾明慶くんは舞台版と同じ。一方で、映画ではお父さん役に豊川悦司さんが参加されました。

三浦 豊川さんはあれほどの名優で、大ベテラン、大先輩ですけど、僕が何度も撮り直ししても嫌な顔ひとつせずOKが出るまで淡々と役を全うしてくださって、本当にありがたい限りでした。

池ノ辺 いい感じのダメさ加減で、世を捨てているなかに色っぽさもあって‥‥。

三浦 そうなんです。あのダメさの中に色っぽさもあるというところが、藤ヶ谷くんの演じる主人公 菅原のお父さんだというのに説得力がありましたよね。最初、藤ヶ谷くんと豊川さんで親子としてのリアリティが出るのかなという不安もあったんですけど、実際やってみると二人とも役になりきって親子にしか見えなかった。

池ノ辺 DNAが同じだな、みたいな(笑)。

三浦 豊川さんはすごいです。僕にとってはテレビドラマのかっこいいイメージが強かったんですが、今回の本当に情けない感じの役もすぐに理解してくださいました。

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

池ノ辺 監督が食事のシーンで何度も撮り直して、豊川さんが「お蕎麦、もう食べられないよ」と言っていたと聞いたんですが(笑)。

三浦 あれはみんなが食べているところからドローンでカメラが引いていくというシーンで、そのドローンの操作がうまくいかなくて何度も取り直しになったんです。それで、とにかくみなさんには食べていてもらわないといけなかったということで、決して演技がどうこうじゃなかったんですよ。でも、もしかしたら僕が食べ方にこだわりすぎて何度もやらせていると思われたかもしれないです(笑)。いずれにしても何回も食べさせてしまったのは僕の責任です。

池ノ辺 藤ヶ谷くんも、すごく良かったですね。

三浦 僕がそもそも舞台版のときに藤ヶ谷くんをキャスティングしたのは、彼の役者としての作品ももちろん見てましたけど、テレビのバラエティなどの佇まいで、ちょっと抜けたところとか可愛げのあるところとか、それが菅原のダメさにリンクするのかなという、その可能性に賭けてお願いしたという経緯があるんです。この菅原の役は、藤ヶ谷くんそれまでの印象にはない部分だったとは思いますが、それが見事にはまってくれました。

もちろん、今までにない役でしたから、ダメさ加減の出し方とか何度も僕に丁寧に質問してきて、意見交換しながら作っていったという感じです。ですからあれは、けっして藤ヶ谷くんが素でやっているわけではなくて、努力の賜物です(笑)。

池ノ辺 本人もいろいろ勉強したと思いますけど、監督の演出もうまかったんだろうなと思いました。

三浦 こういうダメな感じの役もできるとは、世間的にはまだ知られていなかったと思うので、初めてそれを見出した監督というところで、得したとは思ってます(笑)。

池ノ辺 普通はオファーされないような役だったでしょうから、彼にとってもよかったんじゃないですか。

三浦 これからはダメな役ばっかり来るかもしれないですけど(笑)。

三浦大輔監督が語る 文言の強さと楽曲の力で、これ以上のものは無いとタイトルを決めた『そして僕は途方にくれる』

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