グローバルなネットワークが創り上げるインドのVFX
池ノ辺 インドは、映画産業が大変盛んで、素晴らしい作品もたくさん生まれていますが、インドのスタジオはどんなところなんですか?
ラージャマウリ インドのスタジオは、ハリウッドで言うスタジオの、制作・配給会社のような意味はありません。実際にそこで撮影する場所ということですね。ですからスタジオが、ある映画に出資するということはなくて、作品ごと、プロジェクトごとに資金を調達して製作するというのが一般的です。最近はそこに企業が参入するなど少しずつ体制が変わってきた部分もありますけどね。
池ノ辺 監督の作品は特撮も素晴らしいのですが、これはどんなふうに行っているんでしょうか。
ラージャマウリ VFXに関しては、VFXスーパーバイザーと呼ばれる人がいて、その人に全てお任せします。そのスーパーバイザーは、作品によって誰が適任か、スタジオなどと相談して決めます。
池ノ辺 スタッフは皆さんインドの方ですか?
ラージャマウリ インドだけじゃなく、いろんな国籍のスタッフがいます。というのも、このスーパーバイザーたちは世界中にネットワークを持っていて、その仕事に適した人たちに依頼するというやり方なんです。
池ノ辺 グローバルな状況で仕事をされてるんですね。そういえば、弊社にもインドや中国から予告編制作の依頼が来たことがありました。世界は狭いですね(笑)。
ラージャマウリ まさに、そうなんです(笑)。
池ノ辺 この作品では、例えば猛獣が飛び出してくるシーンなど、構図もとてもユニークでした。あれは監督が一つ一つ指示を出して撮影しているんですか。
ラージャマウリ 直接私が指示を出してやりとりをするものもあれば、そうじゃないものもあります。撮影に入る前に、絵コンテや、あるいはアニメの形で、こういうビジュアルでいくというのを事前に提供します。細かな部分については、あらかじめ決めていることもありますが、私が実際にその場でこんな感じでと指示することももちろんあります。こうしたやりとりを経て、最終的に決定して進んでいきます。
池ノ辺 『RRR』はアクションシーンも凄かったですよね。監督が一番こだわったアクションシーンはどこですか。
ラージャマウリ ラーム・チャランが演じるラーマが、警察官として登場する冒頭のシーンですね。彼は殺気だった群衆に対し、一人で戦います。どうやったら一人で何千人も相手にできるか、しかもできるだけリアルに、不自然じゃなく見せたい。それは全く私にとっては大変なチャレンジでした。
実際、何ヵ月もかけて、いろいろな演出を考えたのですが、なかなか納得のいくものになりませんでした。諦めかけた時に、振付家のキング・ソロモンが解決策を示してくれて、結果的に私自身も納得のいくものができました。