Jun 22, 2022 interview

早川千絵監督が語る『PLAN 75』 理不尽さに対する若い人たちの気づきこそ希望と感動につながる

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池ノ辺 自分で作ったものを積極的にいろいろなところに持っていって、見てもらう機会をどんどんつくっていくというのは大切ですね。でもそこで実際に認められるというのは、ほんの一握りでしょうから、監督の才能がそこで認められたってことですよね。

早川 ラッキーだったとは思います。あの時に選んでいただかなかったら、その後の自分はなかったと思うので。

池ノ辺 今回、この映画を観て考えさせられたことの一つが、年齢の限界とか制限というのは社会がつくっているんだなということです。例えば働きたいという人に対して、この歳だったら無理じゃないかとか、どこかで線引きして限界をつくってしまっていると思うんです。自分に対してもそうですね。そういう意味では、年齢に関係なく自分がどう生きていくのか、どう生きたいのかをすごく考えさせられた映画でした。

早川 人によって、刺さるポイントがそれぞれ違うんですよね。先日行ったシニア向け試写会では、感想の中で、自分の親御さんの介護体験を話される方がすごく多くて。自分だったらどうするだろうかとか、やはりご自分の経験が強烈すぎてそこに映画を投影させている方が多かったですね。

池ノ辺 例えば映画の中で、幸夫が高度経済成長の時代にトンネルをつくっていたと言ってました。あれって戦後の日本をつくってきた人ですよね。彼らがいたから日本が発展してきたのに、結局ある程度の年齢になるとそういう扱いをされる。

早川 『十年 Ten Years Japan』のシニア試写会を行った時に、そういうことを話された方がいたんです。僕たちの世代は高度成長期に本当に働いて働いて日本という国を作ってきたのに、今は高齢化が問題だといわれて、高齢者が悪いような、お荷物で社会の迷惑になってるという風潮にどんどんなっている。それが本当に腹立たしくて悲しいとおっしゃった方がいて、その方のことがずっと頭に残っていて幸夫っていうキャラクターに投影させたんです。

池ノ辺 『十年 Ten Years Japan』を作った時から、さらに脚本を膨らませる、そういう過程があったんですね。

早川千絵監督が語る『PLAN 75』 理不尽さに対する若い人たちの気づきこそ希望と感動につながる

「映画が好き」の想いが周りを動かす

池ノ辺 いろいろうかがって思ったのですが、監督ご自身の意思ももちろんですが、ご家族をはじめとする周りの方がすごく理解して応援して支えてくれているんだというのを感じました。そうやって自分のやりたいと思うことを実現されている。それってすごいことですよね。若い人たちに、なぜそれができるんですか? と質問されたら、何と答えます?

早川 映画が好きだから。すごい単純です(笑)。

池ノ辺 そこをずっと貫いてきたから?

早川 貫いてるという意識もないんですけど‥‥。

池ノ辺 ずっと映画を作りたいという旗は掲げていたんでしょうね。そこにいろんなタイミングが降りてきたような感じでしょうか。次の作品について何か考えているものはありますか。

早川 今回、すごく社会的な問題をテーマとして映画に織り込んだので、その反動みたいなものですが、逆にちょっとパーソナルなストーリーを作ってみたいと思っています。

池ノ辺 次回作も楽しみにしています。

早川千絵監督が語る『PLAN 75』 理不尽さに対する若い人たちの気づきこそ希望と感動につながる

池ノ辺 では最後に。監督にとって映画とは何ですか。

早川 私にとっては、『泥の河』を観た時に感じたその体験が、それそのものだと思うんですけど、この世界のどこかに、自分と同じようなまなざしで世界を見ている誰かがいるということを知ることです。それがとても生きる上での力になっていて、それに救われてきた。私にとって映画とはそういう存在で、自分もそういう映画を作っていきたいというふうに思っています。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 吉田周平

プロフィール
早川千絵(はやかわ ちえ)

脚本・監督

NYの美術大学 School of Visual Arts で写真を専攻し独学で映像作品を制作。短編『ナイアガラ』が2014 年カンヌ映画祭シネフォンダシヲン部門入選、ぴあフィルムフェスティバルグランプリ、ソウル国際女性映画祭 グランプリ、ウラジオストク国際映画祭 国際批評家連盟賞 を 受賞。 18年、是枝裕和監督製作総指揮のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編『PLAN75』の監督・脚本を手がける。その短編からキャストを一新し、物語を再構築した本作にて、長編映画デビューを果たす。

【Filmography】
2014 『センチメンタルビデオ』 、 『ナイアガラ』
2015 『 BIRD 』
2016 『冬のメイ』
2018 『PLAN75』オムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編

作品情報
早川千絵監督が語る『PLAN 75』 理不尽さに対する若い人たちの気づきこそ希望と感動につながる
映画『PLAN 75』

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度〈プラン 75〉が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は〈プラン 75〉の申請を検討し始める。一方、市役所の〈プラン 75〉の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、〈プラン 75〉に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは。

監督・脚本:早川千絵

出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

公開中

公式サイト happinet-phantom.com/plan75

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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