これまでの医療ドラマでは影にかくれていた放射線技師、放射線医師の活躍を描いた「ラジエーションハウス」(フジテレビ系)。2019年放送のシーズン1、2021年放送のシーズン2に続く『劇場版ラジエーションハウス』は、映画ならではのスケールアップと共に、感動も倍増。これまでは病院内でドラマが展開していたが、劇場版は感染症拡大の疑いがある島を舞台に、〈チームラジハ〉のメンバーが大きな決断をすることに。放射線技師・五十嵐唯織に窪田正孝、彼が想いを寄せる放射線科医・甘春杏に本田翼、唯織に密かに想いを寄せる広瀬裕乃(広瀬アリス)、さらに八嶋智人、滝藤賢一ら放射線技師たちが今回も顔を揃える。
予告編制作会社バカ・ザ・バッカの代表を務める池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』。今回は、『劇場版ラジエーションハウス』で、TVシリーズに続いて出演する放射線技師・軒下吾郎役の浜野謙太さんに、TVから映画への変化、そしてミュージシャンである浜野さんが考える〈演じること〉の意味をうかがいました。
テレビから映画へ、凝縮されたテーマ
池ノ辺 「ラジエーションハウス」は、ドラマシリーズが2本作られて、そして映画になったわけですが、映画に向けた役作りみたいなものは、したんですか?
浜野 実はそんなにやってないんです。この人の気持ちになる自信がないなと思う時はやるんですが、〈ラジハ〉をやるときは、チームワークかなという感じがするので。
池ノ辺 チームワークを維持するための方法ってあるんですか?
浜野 みんなで「進撃の巨人」を読んだりしてました(笑)。
池ノ辺 それがチームワークに結びつく?
浜野 みんな忙しいし、年齢も違うし、何か1つみんなで面白がれるものがあったら良いなと思ってたところに『進撃の巨人』ラジハ内ブームが来まして。
池ノ辺 じゃあ、TVドラマを作っているときと、あまり変化なくやれた感じですか?
浜野 実は劇場版はスタッフさんが違ったんですよ。ドラマのスタッフさんは〈ラジハ〉のメンバーが何かすると笑ってくれるんですけど、映画のスタッフさんはまったく笑わないんですよ(笑)。
池ノ辺 それは演りにくい(笑)。
浜野 いや、でも、それって当たり前かなと思って。映画のスタッフさんは、映画という2時間を通して、その場面が面白いかどうかっていうのを常にジャッジしながら撮ってるんですね。
池ノ辺 たしかにテレビドラマだと、1話づつ毎週みることもあれば、連続で見ることもあるから、全話を見たトータルの印象が大事ですよね。映画だと2時間弱の中でどう見せるかを、重視したんでしょうね。
浜野 だからある意味、気難しく見えちゃたのかも。でも、僕はそれがすごく好きでした。テレビドラマっていうのは、場合によっては、そんなに時間のことを考えなくていいかもしれない。映画は絶対的な2時間の中で考えないと、お客さんにとって苦しい2時間になっちゃうと思うんですよね。
池ノ辺 TVドラマと映画の違いがちゃんと出ていたと思います。テンポもいいし、テーマが凝縮されていて。
浜野 凝縮されすぎている感じもしますけどね(笑)。よくこれだけいろんなテーマを入れられたと思いましたよ。それに土砂崩れがあったり自衛隊が来たり、ダイナミックなところもあってね。世界を救うとか、日本を巻き込んでの大惨事みたいなことじゃなくて、身近に起こり得ることの中で、〈ラジハ〉のメンバーが、ちゃんと決断をするというのが、僕はすごく良かったと思いました。
池ノ辺 医療をテーマにした作品は、エンターテインメントのなかに、人間が生きていくことの核心を突くような描写が入ってきますね。
浜野 劇中に凄く好きな台詞があって、「残された私たちには、互いにささえあって 生きていく義務があります」っていうことを、(五十嵐)唯織が言うんです。死を選ぶことも自由だみたいな議論もありますが、僕は絶対にそうは思わない。あの言葉にすごく五十嵐唯織の意志を感じましたね。