Jan 14, 2022 interview

上田慎一郎監督が語る 人生が追いつくことで撮れた構想10年の『ポプラン』

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わからないから映画が撮れる

池ノ辺 今回、予告編は上田監督が自分で作ったんですよね?

上田 久しぶりに自分で作りました。

池ノ辺 ということは、昔はずっと自分で作っていたんですか?

上田 そうです。自分で予告編を作ったのは『カメ止め』以来ですね。

池ノ辺 久しぶりの予告編のディレクションはどうでした?

上田 難しかったですね。特に今回は、はっきりとしたジャンルがないと言うか、コメディーでもあるし、ロードムービーでもあるし、もしかしたらモンスターパニックでもある(笑)。どこをピックアップするべきかっていうのはすごく迷いましたね。

池ノ辺 でも、すごく予告編がわかりやすかったです。特報の時からイチモツがピュンビュン飛び回っていて、最後にバーンと来る(笑)。これ面白いわって大笑いさせていただきました。ところで、『ポプラン』の企画・制作でクレジットされているPANPOCOPINA(パンポコピーナ)って、上田監督もメンバーに入っている会社なんですってね?

上田 自分の勤めてる会社なんです。今回PANPOCOPINAが制作もやれたので、前から話していたことなんですが、労働基準をしっかり決めて、スタッフキャストと契約書を結んだ上で撮るってことをやってみようと。

池ノ辺 それはすごく大事なことですよね。若い子たちが映画業界で映画を作ったり、予告編を作ったり、宣伝したりするのに、夜遅くまで仕事が続いたり、眠る時間がないとかやってると、せっかく入ってきても続かずに辞めることになるんですよね。

上田 僕の今までの撮影現場は、そんなに過酷な労働をしてきたタイプではないんですけど、それでも今回は、労働時間を原則1日最長12時間までとするっていうのと、撮影終了から翌日の撮影開始まで10時間以上空けると決めたんですが、やって良かったですね。こうやってはっきり決まっていると安心するんだなと思いました。

上田慎一郎監督が語る 人生が追いつくことで撮れた構想10年の『ポプラン』

池ノ辺 監督としても、時間の配分が出来て心に余裕が出たんじゃないですか?

上田 時間が決まってないとダラダラしたり、ちょっと集中力が落ちてきたりして、精神衛生が悪くなってくるので。はっきりと時間や条件が決まっている中でやるということが、単純に身体的にも良かったと思いますし、スタッフキャストにとっても良かったなと思いますね。

池ノ辺 最後に監督にとって映画ってなんですか?

上田 それは時々聞かれるんですけど、わかりません(笑)。“映画って何?”っていうことを一言で言えるようなら、映画を撮ってないみたいなところもあって。映画って何なんだろう?映画ってこうなんじゃないか?って探しながら撮っているので、それがわかってしまった時は、もしかしたら映画を辞めるときなのかもしれないですね。黒澤明監督が本国のアカデミー賞で名誉賞を受賞されたときに、「僕はまだ映画がわかりません」と言っていて、おこがましいですけど、僕もそのことがすごくわかります。わからないから撮っているんだと思います。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 吉田伊知郎
撮影 / 吉田周平

プロフィール
上田慎一郎(うえだ しんいちろう)

監督

1984年、滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を撮りはじめ、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2009年、映画製作団体を結成。『お米とおっぱい。』『恋する小説家』『テイク8』など10本以上を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。
2018年、初の劇場用長編『カメラを止めるな!』が2館から350館へ拡大する異例の大ヒットを記録。三人共同監督作の『イソップの思うツボ』が2019年8月に公開、そして劇場用長編第二弾となる『スペシャルアクターズ』が同年10月に公開。
2019年1月、映画の企画・制作を行う株式会社PANPOCOPINA(パンポコピーナ)を設立。2020年5月、コロナ禍を受け、監督・スタッフ・キャストが対面せず“完全リモート”で制作する作品『カメラを止めるな!リモート大作戦!』をYouTubeにて無料公開。2021年『100日間生きたワニ』『DIVOC-12』が劇場公開。2022年1月14日『ポプラン』公開予定。

作品情報
上田慎一郎監督が語る 人生が追いつくことで撮れた構想10年の『ポプラン』
映画『ポプラン』

東京の上空を高速で横切る黒い影。ワイドショーでは「東京上空に未確認生物?」との特集が放送されている‥‥。田上は漫画配信で成功を収めた経営者。ある朝、田上は仰天する。イチモツが失くなっていたのだ。田上は「ポプランの会」なる集会に行き着く。そこではイチモツを失った人々が集い、取り戻すための説明を受けていた。「時速200キロで飛びまわる」「6日以内に捕まえねば元に戻らない」「居場所は自分自身が知っている」。田上は、疎遠だった友人や家族の元を訪ね始める。家出したイチモツを探す旅が今はじまる。

監督・脚本:上田慎一郎

出演:皆川暢二、 アベラヒデノブ、徳永えり、しゅはまはるみ、井関友香、永井秀樹、竹井洋介、鍵和田花、朔太郎、西本健太朗、佐藤旭、清瀬やえこ、上田耀介、茨城ヲデル、藤野優光、高木龍之介、原日出子、渡辺裕之

配給:エイベックス・ピクチャーズ

©映画「ポプラン」製作委員会

公開中

公式サイト popran.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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