Jan 14, 2022 interview

上田慎一郎監督が語る 人生が追いつくことで撮れた構想10年の『ポプラン』

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池ノ辺 10年前に思いついたアイデアは、完成した『ポプラン』と比べると、だいぶ違うんですか?

上田 最初は本当にただの奇抜なアイデアに過ぎなかったんですけど、すぐに脚本を書いて。もうその時に、イチモツを探す旅が自分探しの旅になっていくっていうベースは出来ていましたし、カーチェイスのシーンもありました。

池ノ辺 こんなに面白いのに、直ぐに映画にしようとは思わなかったんですか?

上田 当時は借金だらけでお金もなかったですし、この企画が1本の長編映画になるっていう感触もつかめていなかったので。その後、結婚して子供もできて、成功も失敗もあって、さまざまな出会いもあれば疎遠になった人もいるし、そういう人生経験を経たことと、この物語が重なって、やっと作れると思ったんですね。

池ノ辺 企画から実現までに10年かかったのは意味があったわけですね。

上田 これは新しく出来た“映画実験レーベル”Cinema Lab(シネマラボ)の1本になるんですが、「好きなものを作ってください」と言ってくださったので、『ポプラン』を作るのは、今や!(笑)。たぶん10年前に作っていたら、もう少し軽いものになっていただろうと。やっぱり人生の酸いも甘いも、ある程度知った上で作ったことによって、この映画が出来たのかなと思うので。いろいろなタイミングが重なって今作れたということですね。自分の人生も追いついたというか。

上田慎一郎監督が語る 人生が追いつくことで撮れた構想10年の『ポプラン』

池ノ辺 Cinema Labっていうレーベルが出来たのも、ちょうど良かったんでしょうね。『カメラを止めるな!』の監督だからって、イチモツの映画をどんな規模で作れば良いか、プロデューサーも分からないと思いますよ。

上田 シネコンで何百館とかでやるようなメジャーでは、たぶん通らない企画だと思います(笑)。これまで作ってきた『カメラを止めるな!』とか『スペシャルアクターズ』はエンタメ性が高いものでしたが、この『ポプラン』はもう少し実験性が高いものになるだろうなと思ったんですね。だから、Cinema Labが出来たことで、いろいろなタイミングが重なって今作れたんだと思います。

池ノ辺 『ポプラン』を観終わると、無性にいろんな人としゃべりたくなるんですよ。観る人が自分の経験を重ねて観ると、受け止め方が全部違ってくるっていうか、そういう面白さがありましたね。

上田 映画は得てしてそうですけど、やっぱり観た人の掛け算で感想が変わってくると思うので、特に今回の『ポプラン』はその要素が大きいかもしれないですね。解釈の余地が広いところもありますし、余白が多いところもあります。