Feb 27, 2021 interview

映画『花束みたいな恋をした』が大ヒットした裏側を探る / PR・マーケティング・製作会社のリレーション

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映画宣伝の未来

池ノ辺 さて、1月29日に公開された『花束みたいな恋をした』は、2月22日段階で、興行収入17億円を突破しました! 20億を超えて、30億が見えてきたなんて声もありますが、そこまでの大ヒットになったのは、GEMさんと組んだマーケティングの効果もあったと思いますが、ディズニーとか観客層が重なりそうな作品が今、上映されていないことも大きいんじゃないですか?

中野 今回で言うと、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開延期になったのが大きかったと思います。客層はそこそこ重なっていたはずなので、その人たちも来てくれたという印象がありますね。

池ノ辺 それでバカザバッカでは、公開後もこの映画の予告を作り続けているんですよ(笑)

生駒 前に作ったものをベースにしつつ「大ヒット」を受けての予告です。映画の終盤に流れるシーンも入っているんですが、こういうものも、もうお見せしていくんだと思いました。

池ノ辺 もう全部ざっくばらんに見せちゃおうってことですか?

中野 そうですね。坂元裕二さんのセリフが特徴的で、1シーンだけ切り取っても、自分の記憶が重なるようなセリフが作られているので、それを見せれば、興味がそそられるんじゃないかなっていうのがありました。

池ノ辺 今回のGEMさんと組んだ宣伝を振り返ると、どんな感想がありますか?

中野 生駒さんもGEMさんも我々宣伝部のスタッフ達も、20代後半から30代前半で、この映画の登場人物と同世代の若いスタッフが動かしたっていう印象がすごくあります。おじさん達の意見を私を筆頭に誰も聞かなかった(笑)

池ノ辺 なにか言われたの?

中野 たとえば、ショートシチュエーション予告の【キス編】について、「トップスターのキスシーンを予告で出すなんてありえない。キスは映画館で見るもんだ」と(笑)

池ノ辺 その意見を聞かずに、流したのね。

中野 私はあれを先にWEBで見せてしまっても、鑑賞意欲が削がれることはないと思っていましたから。

池ノ辺 今日のお話を聞いていると、映画の宣伝も変わってくる感じがします。

中野 最初に、キャストがテレビのバラエティ番組に多くは出られなかったという話をしましたが、「それなのに何で当たったんですか?」って、よく訊かれるんです。今回は、出演者がバラエティ番組に出るよりも、効率よく宣伝ができることもあるという一つのモデルケースにもなったんじゃないかと思っています。もちろん、映画が素晴らしいということは大前提ですが、正直、最初はテレビ宣伝での焦りもあった中、そういったこともデジタル広告でここまでカバーできるのであれば、他の映画でもやれるんじゃないかな?と思っています。

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文 / 吉田伊知郎

プロフィール
中野 朝子(なかの あさこ)

ヨアケ 宣伝プロデューサー

1978年生まれ。大学卒業後、映画配給会社スローラーナーへ入社、様々なインディペンデント映画の宣伝を担当。リトルモアへ転職後、横浜聡子監督の『ジャーマン+雨』の宣伝プロデューサーを担当、続けて同監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』に製作&宣伝プロデューサーとして従事。出産を機に映画宣伝会社ミラクルヴォイスへ転職。『ぼくの名前はズッキーニ』『この世界の片隅に』等多くの映画パブリシティを担いながら、『まほろ駅前狂騒曲』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』等の宣伝プロデューサーを担当。2020年1月、ヨアケ入社と同時に『花束みたいな恋をした』の宣伝プロデューサーとして従事。

GEM Partners : https://www.gempartners.com/
バカ・ザ・バッカ : https://www.bacca.net/

作品情報
『花束みたいな恋をした』

好きな音楽や映画がほとんど同じで、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続ける。就職したらもっとたくさん一緒に居られると思っていたけど、なぜか気持ちまで少しずつすれ違っていって──。猛スピードで加速する恋の忘れられない〈最高の5年間〉を描く、2021 年ラブストーリー決定版!

監督: 土井裕泰
脚本: 坂元裕二
出演: 菅田将暉 有村架純/オダギリジョー/清原果耶 細田佳央太 他
配給:東京テアトル、リトルモア
©️2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
公開中
公式サイト: https://hana-koi.jp/

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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