Feb 27, 2021 interview

映画『花束みたいな恋をした』が大ヒットした裏側を探る / PR・マーケティング・製作会社のリレーション

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ショートシチュエーション予告&140秒予告が生まれた理由

中野 細田さんからは、メディアごとに素材を変えるのもアリなんじゃないかと提案をいただいて、生駒さんにいろんなパターンをお願いしたんです。

池ノ辺 つまり、同じ予告編を流すんじゃなくて、媒体ごとに違う構成で見せるってことね。それで「ショートシチュエーション予告」と名付けて、【花の名前編】【キス編】【好きかどうか編】みたいにタイトルを付けて、そのシチュエーションだけを見せるものも試したんですよね。細田さんはどうして、そういう提案をしたんですか?

細田 この作品はどこを切り取っても画になるということは、作品を観た中で感じたところでしたので、可能な限りバリエーションがあっても良いのかなと思いました。私はデジタルマーケティングの担当ですので、「ショートシチュエーション予告」広告を展開させていただいたんですが、媒体によって反応が全然変わるんです。たとえば、【キス編】はツイッターで異常に反応が良かったのですが、素材と媒体の親和性をしっかり捉えることができたのかなと思います。

中野 ツイッター、インスタ、YouTubeで何パターンか走らせてみてパフォーマンスが良いものだけ残しましょうというお話だったんですが、宣伝する側としても、本編を見せないほうがいい映画と、見せたほうが良い映画があるなかで、この映画は見せれば見せるほど反応が良いというのがわかってきたんです。

池ノ辺 ツイッターならツイッターのために予告を作るわけね。

中野 当初5分予告とかのアイデアもあったんですけど、ツイッターにアップできる動画の制限時間が140秒だってことに気づいたので、それならツイッターに乗せるためには絶対140秒にしないといけないということで、あえて「140秒予告」ということを宣伝的にも売っていこうと考えました。

『花束みたいな恋をした』140秒予告

池ノ辺 140秒の予告を作っていたときは、web用にのみ使用するということだったんですけど、途中から劇場でもかけるっていう話になったんですよね?

中野 中身がすごく良かったので、劇場サイドからも、あの予告をかけたいと言われたんです。ただ、シネコンは制限がありどうしても長い予告は掛けられないので、配給会社の東京テアトルの劇場だけになってしまったのですが、たとえばテアトル新宿に行けば2分20秒の予告が見られるというのも一つの宣伝になるだろうと。

池ノ辺 この140秒予告をYouTubeで見ると、サムネイルの画像が2人でお風呂に入ってるカットなんですよ。

中野 東京テアトルの宣伝部さんがYouTubeにアップ作業をするんですが、その担当した方が「サムネイルは絶対お風呂のカットにします」と決めて(笑)。そうしたら、跳ねましたね。

池ノ辺 YouTubeのコメント欄に「サムネに釣られた人 正直に手を挙げなさい」って書いてる人いましたね(笑)。それで予告編には、Awesome City Clubの『勿忘』って曲が流れるんですけど、これは予告編のみに流れるんですよね。

中野 映画ではエンドロールで主題歌としてタイアップ曲が流れることも多いのですが、今回は製作サイドの思いで主題歌はなしになりました。そうなると、映画を代弁することのできる歌がないのが宣伝としては弱点だったんですね。そんな中、もともと劇中に本人役で登場するAwesome City Clubさんから、エイベックスを通して、アンオフィシャルでもいいから応援ソングを作らせてほしいと申し出があって。予告に主題歌が無いのは宣伝的に弱いと感じていたので、めちゃくちゃ有り難いですということで、あくまで予告用の曲として話が進んだんです。結果、Awesome City Clubは映画公開後の今、人気が急上昇しています!

池ノ辺 ああいう風に予告だけで使うのを、インスパイアソングっていうんですね。

中野 あれはエイベックスの担当者から、幾つか候補のネーミングを上げて頂いて、こちらで選ばさせてもらったんです。通常は「応援ソング」とか「イメージソング」とかのネーミングが付くんですけど、そういった名前はこの映画には似合わないかなと思いました。実際、映画を観たAwesome City Clubさんがこの映画にインスパイアされましたと仰っていたので、じゃあ、それにさせてくださいと。