May 12, 2017 interview

第6回:毎日いろいろ考えてるけど、やっぱり、やり方次第でヒットは導ける!

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西澤

もう、毎日、歩きながら考えてます。

いろんな看板を見ながら、この看板パクれるかなとか。

池ノ辺

そういえば、クレスト・インターナショナルさんは、前売り券が売れなくてどうしようかなと思っていた時に、「大丈夫だよ、一緒にやろうよ」と西澤さんが声をかけてくれたから、本当に心強かったと言っていましたよ。

西澤

そこにも聞いたんだ?

池ノ辺

リサーチしました。

すごい励みになりましたと聞きました。

西澤

で、結果、大ヒットしたんです。

この春、一番の大ヒット。

イザベル・ユペール主演の『未来よ、さようなら』。

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池ノ辺

業界中で大騒ぎです。

西澤

うちでは、ヒューマントラスト有楽町でかけたんですけど、大ヒットで。

池ノ辺

ミア・ハンセン=ラブ監督が若くて聡明な女性なんでしょうね、映画評も軒並みよかったですものね。

なぜ、前売りは売れなかったんだろう。

西澤

そうそう、前売りは売れなかった。

それでクレストさんがネガティブになってね。

池ノ辺

大丈夫だっていう自信があったんですね。

西澤

いや、根拠はなかった(笑)。

池ノ辺

でも、本当にそれがありがたかったと、言ってましたよ。

あれは、離婚しておひとりさまになる熟年女性の話ですけど、完全にお客様のターゲットがあたったんですか?

西澤

有楽町の劇場は、文化度の高いお客様を狙っているんです。

周辺にルミネがあるし、そこらへんでお買い物をされるお客様を狙っていて、宣伝も30代、40代に向けていた。

あとね、やっぱり、イザベル・ユペールの演技が素晴らしいんですよ。

ちょうど、公開時期がアカデミー賞の授賞式と重なっていて、彼女は違う作品ですけど、主演女優賞にノミネートされていたじゃないですか。

池ノ辺

劇場でのトークショーに上野千鶴子さんと湯山玲子さんの対談を仕込んだりしていましたよね。

西澤

そもそも、イザベル・ユペールを知ってる人って、相当映画好きで、文化度が高いですよ。

そういう人たちのアンテナに引っかかるように、公開前日の最後の新聞広告を見ていただくとわかるんですけど、そこにあえて、「カトリーヌ・ドヌーブの再来」とかベタなコピーを入れたんです。

それで一気に動いたみたい。

池ノ辺

見ました!見ました!それもアイディアね。

西澤

そうですね、やっぱり、やり方次第でヒットは導ける!

池ノ辺

劇場の人だけど、宣伝もやっているということですね。

西澤

ほぼそうですね、ちゃんと配給会社の宣伝会議には出ますからね。

で、毎週、毎週、絶対に映画の初日を迎えるから、本当につらい。

池ノ辺

楽しいじゃなくて辛い? 何が辛いの?

西澤

土曜日に初日を迎えるでしょう。

僕はいつも、都内メインの4館の番組表を持ち歩いているんですけど、初日の数字を見て、すぐに翌週のタイムテーブルをどう取っていくか、決めないといけない。

意外に客層が若かったから、午前中の年配層は省いて、夜にシフトしようとか。

池ノ辺

なるほど! 編成ってそういうことを考えるんですね。

西澤

今は、観客の男女比、年齢層のデータがばっちり出るんで、決めやすいんです。

この作品は男性層よりも女性層が多かったんで、夕方の主婦層を狙えるかなと、夕方に入れたりとか。

回数はとるけれどもキャパの取り方を変えてみようとか。

データと照らし合わせて決めていくんです。

もう、バリバリ、考えます。

池ノ辺

すごい! それは、面白い仕事だ!

西澤

入ったらいいんだけど、厳しいときは、劇場側は上映の回数を減らそうとするじゃないですか。

でも、配給会社の立場でいうと、上映回数を減らされると売り上げが如実に減らされるので、向こうも減らさないようにお願いされますよね。

そこの攻防が本当にすごい。

池ノ辺

そうか、だから初日は辛いのね。それを決めないといけないから。

西澤

そうそう。

辛い。

池ノ辺

一緒に頑張ろうとスタートしたけれど、どこかで切らなきゃならないわけですからね。

西澤

ただ、予想外に入っちゃった場合も、その後に控えていた作品の編成が大変なんですよ。

どれもこれも入っちゃうと、「わー、もう知らない」とうれしい悲鳴が。

池ノ辺

最近だと?

西澤

ケン・ローチ監督の『私はダニエル・ブレイク』。

あれもヒューマントラスト有楽町で大ヒットとなり、後に控えていた作品の配給会社さんにいろいろ相談しました。

池ノ辺

この話の続きは、次回もぜひ、伺いますね。

私の知らない世界で、すごく面白いから!!

(文:金原由佳 / 写真:岡本英理)


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映画『スウィート17モンスター』

共感率100%!こじらせたまま大人になったすべての人に捧ぐ21世紀の青春映画の傑作誕生! 誰もが”あの頃”のリアルな痛さを思い出して悶絶&涙する人続出。”めったに出会えない宝物”のような青春映画だと全米No.1批評家サイトロッテントマト95%絶賛。

主人公ネイディーン役は、『トゥルー・グリッド』で14歳のときにオスカーにノミネートされ、歌手としても人気のヘイリー・スタインフェルド。自己愛と自己嫌悪の狭間で揺れる等身大の17歳像を演じ、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネート。監督は、ウエス・アンダーソンを発掘した名プロデューサーが抜擢したケリー・フレモン・クレイグ。自身の脚本を初監督し、NY映画批評家協会賞第一回作品賞を受賞するなど、本作は、賞レース4受賞、18ノミネートの快挙を達成。 教師役には個性派俳優ウディ・ハレルソン、母親役に『クローザー』のキーラ・セジウィック、兄ダリアン役に『glee/グリー』シリーズのブレイク・ジェナーが、主人公に寄り添い彼女を見守る「大人になりきれない大人」たちを見事に演じている。親、兄妹、友人、そして‟あの頃の自分”目線で共感する人も多いはず。

映画 『スウィ―ト17モンスター』公開中

公式サイト http://www.sweet17monster.com/ 

公式Facebook https://www.facebook.com/Sweet17MonsterJP

公式Twitter https://twitter.com/Sweet17Monster

PROFILE

西澤彰弘(にしざわ・あきひろ)

東京テアトル株式会社 映像事業部 編成部 部長 1969年8月25日、おとめ座、A型。大学卒業後、1992年東京テアトル入社。 銀座テアトルシネマ、シネヴィヴァン六本木、シネセゾン渋谷、テアトルタイムズスクエアで劇場勤務。 2004年~番組編成担当。(ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿、シネリーブル池袋、テアトル梅田、シネリーブル梅田、シネリーブル神戸、キネカ大森、新所沢レッツシネパーク、現在9サイト)

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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