Oct 29, 2016 interview

「10年前の伝説を凌駕しにいく過程にこそ面白味がある」 映画『デスノート Light up the NEW world』池松壮亮インタビュー

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2006年に世界を席巻したメガヒット作『デスノート』から10年。前回の製作陣が再び立ち上がり、オリジナルストーリーの続編を完成させた。6冊のデスノートをめぐって三島(東出昌大)、紫苑(菅田将暉)と三つ巴の頭脳戦を繰り広げるのが、池松壮亮演じる竜崎だ。かつて松山ケンイチが演じ強烈なインパクトを残した名探偵・L。その遺伝子を受け継いだ男という困難な役どころを演じることとなった池松の苦悩とは。そもそもなぜ彼は難題へ挑もうとするのか? 映画『デスノート Light up the NEW world』から、26歳の実力派俳優の本音を探る。

 

ムチャなことだと分かっていても俳優として勝負したかった

──まずは、本作のオファーを受けた時の心境を教えてください。

最初はただただびっくりしましたね、『デスノート』の続編を作ることも、役のオファーが僕のところに舞い込んできたことも。そして、本心では「そんなムチャなことしなくていいのに」と。あれだけ社会現象を巻き起こした作品の10年後を描くなんて、リスクもあるし絶対に苦労するはず。でも、だからこそ「やりたい」と思いました。

──10年前の『デスノート』現象も、リアルタイムで体感されていると思います。

当時僕は地元(福岡)に住んでいたのですが、東京から離れた場所にも『デスノート』の熱は届いていましたし、日本中でムーブメントが起きていることは感じていました。僕も一視聴者として純粋に映画を楽しんでいましたから。

──リスクを感じながらも「やりたい」と思った動機は何だったのでしょう?

今の映画界は漫画原作のものが多いですが、その走りが『デスノート』だったと思うんですよ。そして、その時の(佐藤貴博)プロデューサーが今度は「オリジナル続編」という挑戦的なことをやろうとしている。だから僕も、そこで俳優として勝負したかったんです。もちろんこれまでに僕が出演したどの作品にも挑戦の部分はありましたけど、今回は特にその意味合いが大きかったですね。

 

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竜崎は、松山ケンイチさんが作ったLに対する最大の敬意です

──竜崎を演じるに当たって、今までとは違った苦労もあったのではと思うのですが。

原作がある人物を演じることが当たり前になってしまっていたので、普段はしない作業が多かったです。竜崎はオリジナルキャラクターだけに自由度が高くて、どんな人物に仕上げてもよかったんですよ。だから、テーマは「Lの遺伝子を引き継いだ男が、どんなヤツだったら面白いか?」の一点だけに絞って、どうすればこの作品をブラッシュアップできるのかばかり考えていました。

──その試行錯誤の結果にたどり着いた竜崎は、外見も挙動もLとは異なる部分が多いです。

10年前はデスノートを使う夜神月が黒で、そこに挑むLが白でしたけど、今回はそこを入れ替え、さらに人数も増えて、何が正義で何が悪か見えづらくなっている今の社会が反映されていると思います。そこで、正義をかざす竜崎が一番悪者っぽく見えたら面白いんじゃないかと思って、Lとは全部逆のことをやりました。ただ、根底にあるものは竜崎もLも同じなんですよ。自分しか信じられない性格も、事件を解決して平和をもたらしたいという意志も。その目的を果たすための振舞い方が逆というだけで。

 

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──そこに「オレはLを超える」という竜崎の意志が込められているわけですね。となると、10年前に松山ケンイチさんが演じたLを超えることが池松さんの使命だったのでしょうか。

こんなことを言ってはいけないのかも知れませんが、最初からLを超えることは不可能だと思っていました。かつてあれだけ多くの人たちに受け入れられて、しかも10年経ってそれぞれの心の中でさらに育った『デスノート』に、キャラクターの部分では誰も勝ち目はない、と。じゃあ何が『デスノート Light up the NEW world』の面白味かと言うと、「超えにいくこと」自体だと思うんです。それは僕だけに限らずキャストもスタッフもみんなそのつもりで挑んでいましたし、10年前の伝説を凌駕しに行く過程こそがもはや映画なんです。その結果、竜崎がLを超えたか超えなかったかは別としても、「面白い二世が出てきたな!」とは思ってほしい。

──池松さんの竜崎を含め、全員で「超えに行こう」と挑んだことで生まれたのが本作だと。

たとえば竜崎のひょっとこのお面一つにしても、想像をはるかに超えるハイクオリティーなものが出来上がってきましたからね。なので、当初は登場シーンでしか使う予定はなかったんですけど、「ぜひ他のシーンでも使いたい」と僕が提案しました。撮影現場はとてもクリエイティブな場所だったと思います。これだけの規模でみんなが悩みながら作品を作ることってなかなかないことだし、とても楽しかったです。

──超える・超えないの結果論よりも、超えようと挑んだことに意味があり、面白味があるんですね。

はい。10年前の『デスノート』があることは曲げられない事実だし、竜崎にしても松山さんが作ったLありきの発想ですから。そこに対する最大の敬意の表し方として、何をすべきかを常に考えていました。

 

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俳優という職業をとことん極めてみたい

──本作に挑んだことで、池松さんの中で変わったことはありますか?

幅は広がったと思います。自分の中にある表現の追求方法では竜崎は面白くならないと思ったから、今まで他の作品ではやらなかったキャラクター作りについても考えましたし。僕のキャリアにおいて、新たな扉を開けたことは間違いないです。

──最初から苦労すると分かっていた竜崎に挑んだのは、俳優としてのステップアップを望んでいたから?

う~ん、なぜでしょう……。楽をしようと思えばいくらでもできるはずなんですけど、それを自分で許せないと言うか……。別に人気者になりたいから俳優をやっているわけではなくて、クリエイティブなことにしか興味が持てない僕がたまたま俳優という職業に出会って、とことん極めてみたいと思っているだけなんです。だからこんな苦労を選ぶんでしょうね(笑)。でも、今は少なからず向上心があるので、まだまだ言い訳をせず本音でもの作りができる場所に身を置きたいと思っています。

 

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──その苦労を経たからこそ、出来上がった『デスノート Light up the NEW world』には手応えがあって、思い入れもあると思います。

10年経って続編をやるわけですから、10年分パワーアップしたものをお見せしなければいけないし、子どもだましのようなことは一切やっていません。前作が好きだった方だけでなく、前作を見ていない方にも、何なら普段映画を見ない方にすら楽しんでほしいという意識でみんなで一生懸命作ったので、少しでも興味があれば見ていただきたいです。