Mar 29, 2019 interview

【『いだてん』美濃部孝蔵役・森山未來、インタビュー】 松尾スズキに弟子入りしてビートたけしになるような役回りは光栄だが、戸惑いも

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──映画『苦役列車』のとき、主人公の荒んだ生活を理解するために、実際、そういう生活を体験して役作りをされたそうですが、今回はそういうことはなかったですか?

『苦役列車』のときは四畳半に住みこみましたねえ。今回も浅草に住んだほうがいいかなと迷いましたが、撮影期間が長く、去年の4月ぐらいから始まって今年の夏ぐらいまでありそうなので、現実的に不可能でした。ただ、とっかかりは見つけたかったから、浅草方面にはずっと通って寄席を見たりはしていましたけれど。そういう体験主義みたいなことをするよりは、菊之丞さんと話したように、いまの自分のなかから楽しめることを探し出すようなアプローチをしています。

──今回、初となる大河ドラマの現場の雰囲気はいかがですか?

……長いです(笑)。だからやりたくなかったんですけど(笑)、井上剛さんと大根仁さんに誘われたら断れません。拘束期間以外に関してはストレスはないですし、なにより、技術部、美術部、制作部……どのパートもすごくしっかりしていて、これこそ長い歴史を積み上げてきた大河ドラマならではのものなのだろうと感動しています。

──井上さんと大根さんにはどんなふうに誘われたのですか。

井上さんと大根さんとはそれぞれ別の現場で一緒に仕事をしていて、ふたりとも信頼している人たちです。そのふたりに、あるときいきなり飲み屋に呼び出されて。チーフ演出が井上さんで、大根さんが外部スタッフとしてNHKでディレクターをやるから大河ドラマに出ないかと言われたので、逃げられなかったです(笑)。

──森山さんにとって、井上さんと大根さんとは。

僕の映像活動において、ふたりは大きな存在です。井上さんとは『未来は今』や『その街のこども』という、神戸の震災にちなんだ番組を作りました。大根さんは『モテキ』。ふたりとももちろんセンスのある人ですが、一緒に対話を重ねて作っていくので、それがやっていて心地よい。ちょうどどちらも2010年から11年ぐらいの作品で、大根さんが『未来は今』か『その街の子ども』を見て、この手法がやばい、みたいなことをブログに書いていたんですよ。たぶん『モテキ』ではそれにインスパイアされたことを採り入れたんでしょうね。そんなふたりが会わない理由はないんじゃないかなあと思って、ちょうど大根さんと大阪に行ったとき、確かその時は井上さんが大阪局にいたから、一回会いましょうと3人で食事をしたんです。それが今回、大河で一緒に仕事することになるなんて……(笑)。

──大根さんが大河を撮っている様子をご覧になっていかがですか?

なんか生き生きしていますよ。大河ドラマに外部のディレクターが参加することは異例だそうで、NHKの方たちのノウハウを大根さんが見て、すごくたくさん発見があっただろうと思いますし、逆にNHKの方々も大根さんのやり方を見て内部のやり方を再認識して、と相互効果があるんじゃないかと思います。意識的にスタッフの間を縫って、なんか鼓舞しているっていうか、いい意味で空気を掻き回しているんですよ。自分の演出回じゃないときに現場に来て、夜食を作って、スタッフと役者たちにふるまったりもしていました。たぶん普段の大根さんは、自分でプロデューサー的なこともして、脚本書いて、監督して、カメラも回すこともあってと、一人で背負うことが多いけれど、今回は立ち位置として、楽しめる余裕があるのかなと思います。