Mar 29, 2019 interview

【『いだてん』美濃部孝蔵役・森山未來、インタビュー】 松尾スズキに弟子入りしてビートたけしになるような役回りは光栄だが、戸惑いも

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──13回で、落語『富久』が四三の走りと重なるシーンはいかがでしたか。

『富久』をやってみたもののしくじる設定で(笑)、酔っ払って高座に上がり、高座着も ちゃんと着ることができていない上に途中で止めちゃうので、上手にやろうとするのではなく、とにかく酔っ払いの勢いと熱量と、あとは初めて高座に上がる緊張と、そこから変な突破の仕方をしちゃうみたいな感じで、得体の知れないエネルギーを見せることにつとめました。映像では僕の落語と、四三(中村勘九郎)の走りがカットバックされますが、落語自体は一連で撮りました。今回や若いころはまだへたくそな落語でいいのですが、たぶん僕は20代から50代ぐらいまで演じることになるはずなので……年を経るごとにうまくなっていく志ん生をどう演じたらいいのか悩みますね(笑)。

──森山さんが思う美濃部孝蔵の魅力を教えてください。

志ん生にとって、落語の内容と自分の人生でやっていることとがぜんぶ地続きで、落語に人生を捧げきったところがほんとにすごいと思います。たまたまそうなっただけかもしれませんが(笑)。さきほど孝蔵のエピソードはどれも楽しいと言いましたが、志ん生の口によってトランスレートされて面白い話に聞こえているだけで、ほんとうはすべてのエピソードがきっと凄惨きわまりないものです(笑)。そんな自分の悲惨な人生をどこか俯瞰で眺めていて、それを笑える噺というエンターテインメントに作り変えているんです。たとえば、『らくだ』という噺は死人を運んでいく話だし、他にもえげつない噺がいっぱいありますが、語り方で愛嬌ある話に思わせてしまうこともすごいです。

──落語をやってみて感じた難しいところや面白いところを教えてください。

落語というよりも、江戸の話し言葉は難しいです。僕はメンタルが関西人で、その気質と関東の人の気質はそもそも違うと思うんですよ。江戸の人は、全員じゃないかもしれないですが、竹を割ったようなすぱんと歯切れがいい印象ですが、そういう生き方をしている関西人ってそんなに見ないですから(笑)。関西人がダメっていうわけじゃないんですよ。僕もそうだし、人との関わり方とか生き方が関東と関西では多少違うように感じるだけなんです。そういったことを考えていて、芸能考証・指導の友吉鶴心さんと話をしたとき、江戸というか浅草だって、結局いろんな人間の集まりで、いろんな文化が混ざって形成されているので、これが江戸気質であり、江戸言葉であると決めることはできないそうです。もちろん、孝蔵は生粋の下町っ子っていう設定なので他の地域から移住してきた人とは違いますが、たけしさんがたけしさんのままいるように、僕は僕なりのアプローチで演じる方法が見つけられたほうが面白いと考えるようになりました。これは落語・江戸ことば指導の古今亭菊之丞さんに言っていただいたことなんですが、ある一定のところまで技術が到達したら、あとの勝負は人となりでしかないということです。その話を聞いてからは、どういうふうにいれば高座や浅草の町並みにいかに僕が心地よくいられるかを重要視するようになりました。