Nov 26, 2019 interview

冲方丁×又吉直樹の“人間失格”対談!脚本&小説の執筆裏話、太宰作品が愛される理由を語る

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いまもなお愛され続ける太宰作品

――太宰治が三鷹の玉川上水で入水自殺を遂げたのが1948年6月。今年は『HUMAN LOST 人間失格』のほかにも、蜷川実花監督作『人間失格 太宰治と3人の女たち』が劇場公開されました。死後70年以上を経ても、太宰作品が愛され続けているのはなぜでしょうか?

又吉 すごく当たり前の意見かもしれませんが、太宰の書簡体の小説は他人の日記を覗き見するようなおもしろさがあったと思うんです。それがいまはSNSが広まり、他人の日記を読んだり、生活を覗くことが身近になった。「あぁ、毎日しんどいなぁ」とか「打ち上げに行くのは面倒くさいなぁ」とか(笑)、そんな普段は言語化しないような感覚も、太宰は小説の中で描いている。「あぁ、そうや。自分と同じやん」と思わせるものがある。そんな部分があることで、いまも新しいファンを獲得しているんじゃないかと僕は思います。

――SNS時代のいま、太宰が生きていたら大炎上しているでしょうね。

又吉 するでしょうね。

冲方 SNSのなかった当時から炎上していましたよ。炎上どころか、社会問題になっていたわけですから(笑)。

――『HUMAN LOST 人間失格』には太宰治などの文学作品だけでなく、いろんなジャパニメーションの要素も感じられます。

冲方 最初のコンセプトから、海外を狙ったものだったんです。“ジャパニメーション”“ダークヒーロー”、そして“太宰治”が、『HUMAN LOST 人間失格』の企画のキーワードになっていました。最後の“太宰治”というのが突拍子もないんですが(笑)。ジャパニメーションの先駆作である『AKIRA』(88年)のほかにも、僕も脚本で参加した『攻殻機動隊』シリーズ、今回の制作会社であるポリゴン・ピクチュアズが手掛けたアニメーション版『GODZILLA』(17・18年)などを、観る人によっては連想するかもしれません。多彩なジャパニメーションの要素を盛り込もうと、アニメーションスタッフは意気込んでいました。

又吉 (『HUMAN LOST 人間失格』に登場する)ロボットの警察犬、おもしろかったです。よく見ると、三本脚で動いているんですよね。

冲方 三本脚で動くから、すごく不安定なんです。ロボット犬は三本脚ですしバイクは前輪がなかったりと、登場人物もメカも体の一部が欠損しているという設定です。未来社会のいびつさをビジュアルとして表現したいという、アニメーションチームのこだわりですね。

又吉 ロボット犬が追い掛けてくるシーンは、めっちゃ怖い。

冲方 三本脚で走るので、アニメーションとして描くのは大変だったと思います。最終的には木﨑文智監督が絵コンテにしてまとめたんですが、絵と台詞との間に矛盾が生じないように、かなり綿密に打ち合わせました。

又吉 そうか。そのへんのことは、僕は全然詳しくないんです。アニメーションの脚本を書くのは、いろんなやりとりがあるんですね。

――又吉さんの小説は読んでいると情景が浮かんできますし、『火花』だけでなく『劇場』も映画化が決まっています。小説を書いている時に映像化は意識していますか?

又吉 頭に浮かんできたイメージを、文章として表現する感じですね。映画やドラマになることを想定して、小説を書くことはありません。でも、僕の小説を読んで情景が浮かんでくるというのは、僕が長年コントを書いてきたことが影響しているかもしれないですね。後に自分が演じることを目的にしてコントは書いていますから。20年くらいずっとコントを書いてきたので、小説を書く時も無意識のうちにそういった習性が働いているのかもしれません。