3月10日公開の映画『ひとりぼっちじゃない』。『世界の中心で、愛を叫ぶ』に始まり、数々の名作を送り出してきた脚本家・伊藤ちひろの小説が原作で、この度、行定勲監督プロデュースにより、著者自身が初監督を務めた映画作品だ。
物語は、人とコミュニケーションがうまくとれない歯科医師のススメが、“自分でも理解できない自分”を理解していくれる宮子に恋することで、退屈な日常が変化を帯びていくというもの。恋愛という世界のなかで、ひとつになれない歯痒い幸福と不安や嫉妬が絡み、純愛と狂気が観客を揺さぶる。
主演のススメ役に、アーティストとして音楽シーンに大きなインパクトを刻みつづけるking Gnu・井口理。そして物語の中心であり登場人物たちを翻弄する、つかみどころのない謎多き美女・宮子役に馬場ふみか。彼女をとおして、この映画の魅力について迫っていきたい。
宮子と似ている私
―― 試写を拝見して独特の世界観だなと思いました。この作品の出演が決まったとき、どんな感想をお持ちでしたか?
脚本をいただいて読んでいると全員セリフが少ないんですよね。文字だけでは、どういうふうに映像が作られるかまったく想像できませんでしたし、一方ですごく楽しみだなと思いました。今回演じた宮子は、私が今まで演じてきた役とかなり遠いので、チャレンジだなとも思いました。
―― 馬場さんは、どちらかというと感情を爆発するような役柄が、これまで多かったですもんね。ご自身はどんなふうに宮子のことをとらえていたんですか?
すごく柔らかくて優しくて温かいけど、実はそうじゃない。一見そう見えるだけ、みたいなところがあるじゃないですか(笑)。でも、まったく優しくないわけではなく、ただ、もうちょっと鋭さもある人ですかね。宮子は、自分からは、だいぶ遠い人だなぁと思っていたんですよね、最初は。でも意外とそうじゃなかったみたいです(笑)。
時間をかけて本読みや衣装合わせをして監督と話していくなかで「馬場さんと宮子、似てますよ」って言われたんです。「え、どこがですか?」って思わず聞き返しました。
―― 馬場さんには自覚ないわけですからね。
そうそう、分からなくて。そうしたら「宮子のドライなところ、馬場さんにも感じます」って言われました。そういう部分に役柄との近さがあったというか‥‥驚きましたね。確かに言われてみれば、私もそうかもしれないと思うようになって、しばらく友達に「私って冷たいと思う?」って聞いて回っていました。
―― お友達には何て言われたんですか?
「冷たいっていうか、ドライだね」って言われました(笑)。