大立ち回りシーンの撮影秘話
──鷹村が御手杵と呼ばれる大きな槍で戦う大立ち回りシーンは大迫力でしたが、これまでにあのような武器で立ち回りされたことはあったのでしょうか?
槍術は過去の立ち回りシーンで経験したことがあったのですが、今回のようなのは初めてでした。御手杵は天下三槍と呼ばれた名槍の1つで、もともとは実用的なものではなく飾りだったのではないかと思います。天下三槍のうち蜻蛉切と日本号は実際に使っていたのではないかと思いますが、御手杵は「これはいったい、どうやって使うの?」という槍なんです(笑)。
──そんな御手杵が鷹村によってブンブンと力強く振り回されていて、これまでに観たことのない立ち回りになっていたのでおもしろかったです!
たしかに、飾ることで威厳の象徴となるような槍を持って戦う姿はおもしろいと思いました。御手杵は刀身が普通の槍の倍以上あって先端が重いので、槍術の経験があってもバランス感覚や扱い方がまったく違うので苦戦しました。撮影の合間に何度も振り回して御手杵に慣れるようにしていたのと、立ち回りを指導してくださった方が事前に十分熟知してくださっていたおかげでとてもスムーズに撮影に挑めました。
年齢を重ねて気付いたこと
──春之介のようにピンチに陥った場合、高橋さんはどうやって乗り越えていますか?
キツい状況やピンチに陥った時はわりと俯瞰で見てしまうので、そのこと自体をおもしろがるところがあります。「こんなに変わる?」とか「こんなにおもしろくなる?」と状況が変わっていくのが楽しいんです(笑)。反対にピンチじゃない時のほうが構えてしまう。外的刺激のようなものは常に明暗あるわけで、どうせ暗の状況にいるならばそこで明を見ていたいと思いますし、脳の回路がそういう癖づけになっているのだと思います。いま自分に何が起きているのかがどんどん俯瞰で見えるようになっているのではないかと。
──俳優としてのキャリアを重ねてきたからこそ気付いたことなのでしょうか?
それもありますが、例えば喜びやポジティブな感情は苦しいことがないとわからない気がしていて。それに喜びや苦しみ、ポジティブやネガティブといった感情は自分の付属品だと思っているんです。以前は他者の反応によって自分の心が作られていると勘違いしていたところもあったのですが、ようやく自分の心は他者が決めるのではないということに気付いたというか、結局は自分の心がどう解釈するかなので、そこに注視できるようになったのは大きいです。
──年齢を重ねてきたことも影響していますよね。
はい。年齢を重ねていくとどんどん言葉を学びますし、読む本の量も増えていって説明力も上がってくるというのはあると思います。自分で自分を納得させることができる言葉を言語化できているからこそ、ピンチの状況を俯瞰で見ることができるのかもしれません。