Aug 23, 2019 interview

高橋一生に聞く『引っ越し大名!』撮影秘話、大きな影響を受けた名優&驚かされた海外ドラマ

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影響を受けた名優、驚かされた海外ドラマ

──高橋さんのルーツになった作品や影響を受けた人を教えてください。

俳優の志村喬さんから大きな影響を受けています。作品でいうと黒澤明監督の『生きる』(52年)。フィルムの質感もあると思いますが、とにかく静かで暗くて、余命わずかな男のどん底の感じが伝わってきます。志村さん演じる主人公の渡邊は、病気で先が長くないことを悟っていて、周りから同情されたり気遣われたりする中で、ある日自分がやるべきことを見つけるのですが、そこからの渡邊の心の動きを表現する志村さんのお芝居は目を見張るものがあります。作品自体にとても純粋なメッセージが込められているところも好きです。

──クラシックな名作をご覧になることが多いですか?

旧作・新作問わず、休みの日は映画ばかり観ています。最近はDVDを持っているのにも関わらず、配信で『アメリカン・サイコ』(00年)を観てしまいました(笑)。久々に観たのですが、少し自分と通じるところがあっておもしろかったです。と言っても自分がサイコというわけではないですし(笑)、クリスチャン・ベール演じるベイトマンのような自身のビジュアルへのこだわりもありませんが、内在している狂気性や、誰もが思っているけれどそれを抑圧することでどんどん気が狂っていってしまうという見せ方は本当に圧倒されます。観終わってすぐに「これすごいな! タイムリー!」と独り言を言っている自分がいました(笑)。

──放送中のドラマ『凪のお暇』で高橋さんが演じる我聞慎二は少し狂気的な部分を秘めていますが、“タイムリー”というのはもしかして…?

バレましたか(笑)。

── 第1話の最後で我聞が号泣した時は驚きました。

本当ですか? あのシーンは自分の中で筋道が通っているので、ビックリしたと言われて僕もいまビックリしています(笑)。

──(笑)。ちなみに海外ドラマもご覧になったりしますか?

去年、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』(18年)というホラー系のドラマを観たのですが、素晴らしかったです。劇中に「あとは紙吹雪」という台詞が出てきて最初は「どういうことだろう?」と。別に考察せずに聞き流してもいい言葉かもしれませんが、もしかしたらあの台詞は「過去と現在と未来が同時に存在している」ということを言いたいのではないかと思いました。それってすごい概念ですし、これをサラッと描けてしまう海外ドラマの精神の成熟さには本当に驚かされました。

取材・文/奥村百恵
撮影/三橋優美子

プロフィール
高橋一生(たかはし・いっせい)

1980年生まれ、東京都出身。映画、TVドラマ、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作に映画『嘘を愛する女』『blank13』『空飛ぶタイヤ』『億男』(18年)、『九月の恋と出会うまで』(19年)、ドラマ『僕らは奇跡でできている』(18年)、『みかづき』『東京独身男子』(19年)など。放送中のドラマ『凪のお暇』に出演中。待機作に映画『ロマンスドール』(2020年公開予定)、舞台『天保十二年のシェイクスピア』(2020年2月)がある。

公開情報
『引っ越し大名!』

姫路藩の書庫番・片桐春之介(星野源)はいつも書庫にこもりっきりの引きこもり侍。ある時、藩主の松平直矩(及川光博)は、幕府から国替え(引っ越し)を言い渡される。行先は豊後(大分県)の日田。1万人の引っ越しという、参勤交代をはるかに上回る費用と労力が必要な一大事業。お国最大のピンチに、引っ越し奉行として春之介に白羽の矢が立つことに。無理難題の大役に怖気づく春之介だったが、幼なじみで武芸の達人・鷹村源右衛門(高橋一生)の説得もあり、嫌々引き受ける羽目になる。引っ越しの経験がない春之介は、前任の引っ越し奉行の娘・於蘭(高畑充希)に助けを借りることに。果たして春之介は、一世一代のプロジェクトを知恵と工夫で無事に成し遂げ、国を救うことができるのか――?
原作・脚本:土橋章宏『引っ越し大名三千里』(ハルキ文庫刊)
監督:犬童一心
出演:星野源 高橋一生 高畑充希 小澤征悦 濱田岳 西村まさ彦 松重豊 及川光博 ほか
主題歌:ユニコーン『でんでん』(Ki/oon Music)
配給:松竹
2019年8月30日(金)公開
©2019「引っ越し大名!」製作委員会
公式サイト:http://hikkoshi-movie.jp/

書籍情報
『引っ越し大名三千里』土橋章宏/ハルキ文庫刊