May 30, 2017 interview

「暴君・秀吉に“花”という美で闘った物語だからこそ、今の時代に創る意味がある」篠原哲雄監督インタビュー

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──では最後に篠原監督のおススメの本や愛読書などを教えてください。

ごく最近、坂口安吾の『堕落論』を買い直したんですよ。角川文庫と新潮文庫から出ているんですが、若干、収録内容が違うのでどちらにしようか迷って角川のものを選びました。学生のときに坂口安吾は好きで読んでいたんですけど、きっとあの頃はわかったふりをしていたんでしょうね。若いときはそういうのあるじゃないですか、安吾を読んでいる自分、みたいな(笑)。でもよくよく考えたらあまり理解していないんじゃないかと、もう1度読み直そうと思ったんですね。日本文化私観から、青春論や悪妻論、恋愛論など多岐にわたって書いてあって、世阿弥の花伝書のことも触れているんです。坂口安吾は無頼派で、『堕落論』において、戦争に反対していて、堕落することは悪いことではないと言っていて、さらに太宰治みたいに命を簡単に粗末にしなかったし、改めてすごい人だなと思っています。昔、坂口安吾の『ジロリの女』という小説があって、“ジロリ”と人を見る主人公が、強い女性に“ジロリ”と見られることによって真心を尽くさないといけないと思う男の話なんですが、この小説がすごく面白い。昔の原作で何か映像化できる作品はありませんかと関係者から聞かれたとき、実現するかは別の話ですけど、この作品を挙げています。もう1度、読み直すことで坂口安吾が言っていたことを現在に結び付けられないかをこれから研究しようかと。安吾再発見という感じですね。

 

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取材・文/熊谷真由子
撮影/名児耶洋

 

プロフィール

 

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篠原哲雄

1962年2月9日生まれ。東京都出身。1989年、自主製作映画「RUNNING HIGH」がぴあフィルムフェスティバルで、特別賞を受賞。今も人気を誇る山崎まさよし主演の「月とキャベツ」(96)で劇場用長編作品デビュー。以降、「命」(02)、「昭和歌謡大全集」(03)、「深呼吸の必要」(04)、「地下鉄(メトロ)に乗って」(06)、「真夏のオリオン」(09)、「起終点駅 ターミナル」(15)などジャンルを問わず多くの作品を手掛ける。

 

映画レビュー

 

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池坊に伝わる伝説を基に、時の権力者・豊臣秀吉に刃ではなく花で立ち向った池坊専好の姿を描いたエンターテインメント時代劇。前半~中盤では庶民の生活や心の機微をじっくり丁寧に綴ることで秀吉の横暴さが際立ち、専好が“けったいな戦さ”を遂げるに至る切実さが浮き彫りに。クライマックスでは花による戦さのウェットになりすぎない展開に思わずほっこりとなってしまうはず。変わり者だけど情に深い専好を演じる野村萬斎がまさにハマり役で、時にゾクッとするような表情を見せるのも注目。池坊家の全面協力で登場する200瓶あまりの花も美しい!

映画『花戦さ』

原作:鬼塚忠「花いくさ」(角川文庫刊)
監督:篠原哲雄
脚本:森下佳子
音楽:久石 譲
出演:野村萬斎 市川猿之助 中井貴一 佐々木蔵之介 佐藤浩市 高橋克実 山内圭哉和田正人 森川 葵 吉田栄作 竹下景子 他
配給:東映
2017年6月3日(土)より 全国公開
(C)2017「花戦さ」製作委員会
公式サイト:http://www.hanaikusa.jp/

 

 

原作紹介

 

「花いくさ」鬼塚忠/角川文庫

鬼塚 忠原作の歴史小説。時代は織田信長が本能寺の変で自害した後。厚き友情と信頼で結ばれていた花の名人・池坊専好と茶の名人・千利休。親交を深めていたふたりだったが、時の権力者・秀吉の怒りを買ったことで利休は非業の死を遂げることに。その死を悲しむと同時に横暴な秀吉に対し、専好は復讐する機会が訪れ…。

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-篠原哲雄監督おススメ本

「堕落論」坂口安吾/角川文庫

戦前・戦後にかけて活躍した無頼派作家・坂口安吾の代表作である随筆集。1947年刊行。戦後の混乱期に、以前の道徳観や論理を否定することによって人間の本質を見つめ、新しい指標を指し示すことで当時の若者から絶大な支持を得た。「恋愛論」「エゴイズム小論」「教祖の文学」など13編のエッセイが収録されている。

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