May 30, 2017 interview

「暴君・秀吉に“花”という美で闘った物語だからこそ、今の時代に創る意味がある」篠原哲雄監督インタビュー

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華道の家元・池坊の初代・専好が暴君・秀吉をある方法で諫めたという、池坊に伝わる伝説を基にした痛快時代劇エンタテインメント「花戦さ」。野村萬斎や市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市、ら豪華キャストが勢ぞろいした作品のメガホンを執ったのは、「月とキャベツ」や「山桜」など、数々の名作を残してきた篠原哲雄監督。取材部屋にやって来た監督は「花戦さ」の台本を手にしていて――。

 

──今、「花戦さ」の台本をお持ちですが、いつも取材時には台本を持ち歩かれているんでしょうか?

聞かれたときに、すぐ答えられないとイヤだなと思って持ち歩いています。セリフの確認なんかもすぐできますし(笑)。

──かなり書き込まれていますね。

監督なる者はだいたい書き込みますし、書き込まざるをえないです。ここのシーンはこういうふうにしようというのは前日にコンテを作って、この辺で音楽が必要など、全部台本に書き込んでいきますね。

 

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──台本自体が映画の設計図と言われますが、さらに細かな設計図をさらに重ねていくというイメージを受けました。

台本に一言一句すべて書いてあるわけではないですから、台本上はこうだけどこういう表現にした方がいいという場合もある。それをどういうカットで構成していけば一番伝わるかを考えることは演出の一部です。それをさらにキャメラマンから、監督はこういうイメージで伝えてきたけど、こういう芝居ならこう撮った方が伝わると思うと意見されることも当然ある。そういうときはなるほど!と思いながら変えることもありますし。ちなみに信長が登場した最初のシーンは全部で65カットあるんですが、そこも事前に整理して撮影プランを練りました。ロスなく進行するために絵コンテを作ってスタッフ全員に配りましたけど、その絵コンテを基に最終的に自分の言葉でまとめたのが、この台本に書いた(文字の)“コンテ”。僕は絵で考えるより字で考えるタイプなんです。でも他の人は視覚的に絵で見た方がわかるから、今回は絵コンテの専門の方に描いていただいて、最終的に自分の理解のために現場でまた字で書き起こすんです。

 

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──なるほど、ありがとうございました。では「花戦さ」の話に入りますが、オファーがあったときにどんな点に惹かれましたか?

僕は時代劇は3本目なんですが、戦国時代が舞台の作品を撮るのは初めてでした。やはり日本人ですし、時代劇を撮るならば戦国時代が観るのも面白いし、やってみたいというのはどこかにありました。その中で今回は秀吉という“横暴な権力者”に対して花で闘うという着想がまず面白かった。今は強烈な権力者がいる時代ではないですが、やっぱり民衆は政治に影響を受けながら理不尽な想いをしているわけじゃないですか。そういうことに対して、今のこの世の中でやる意味があるんじゃないかと思いました。特に誰かが声高にものを言うわけではないけれど誰かが権力者に対して諌めたりすることがあるかもしれない。おそらくものを作っていることはそうしたことに繋がっているはずなんですけど、それが、剣ではなく――要するに暴力ではなく、美で説こうとした点に惹かれたので依頼を受けました。

──監督の時代劇2作は藤沢周平さん原作の「山桜」と「小川の辺」で、江戸時代の泰平の世での武士を描いていた作品でしたよね。

撮っている側からすると、江戸時代も戦国時代も両方ともフィクションなんですよね(笑)。もちろん史実がありますから、細かいことで言うと江戸時代の屋根瓦はこうだとか、室町時代にはどうだったとかいろいろあるんです。だから今回も京都のセットで瓦を物理的に変えたり合成で変えたり。

 

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