May 30, 2017 interview

「暴君・秀吉に“花”という美で闘った物語だからこそ、今の時代に創る意味がある」篠原哲雄監督インタビュー

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野村萬斎さんの演技を見ていてワクワクする瞬間がたくさんあった

 

──錚々たる役者陣が集結していますよね。

野村萬斎さんはやっぱりすごいなと思いました。ご自身が演出家でもあるのでやはりいろいろなことを考えていて、今回はクライマックスについてある意見をいただいたことをきっかけに展開を変えたり、佐藤浩市さんが演じる千利休が「けったいな花やなあ」と言うと、萬斎さん演じる専好が昇竜をイメージした仕草をして答える姿を見て、面白く、懐の深さを感じました。ここから始まり、萬斎さんの演技を見て、何度となく感心する場面がありました。萬斎さんは狂言、市川猿之助さんは歌舞伎、中井貴一さんと佐藤浩市さんは日本映画界を背負って立つ人、佐々木蔵之介さんや(高橋)克実さん、山内圭哉さんは小劇場の出身で、いろいろなフィールドから集まった、ワザを持っていらっしゃる方々でした。佐藤さんは伝統芸に負けないぞという気概で来てくださっている印象がありましたし、中井さんは飄々と自己表現をされている方でした。こういう人たちに対しては余計なことを言う必要は全くなくて、どうやってバランスをとるかということを気に掛けていました。この人たちが失速せずにやりたいことをやって、それが撮れればいいという気持ちでしたね。

 

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──皆さん、それぞれ意見などをおっしゃったのでしょうか?

信長役の中井さんとは、信長は(専好が生けた)花を見るときにどうやって見るんだろうという話をしました。最初、僕はいろいろな動線を考えて立って見るイメージですと言っていたんですが、中井さんから「途中で座って見るのはどうでしょうか」と提案があって。確かに最初に立って見てから中井さんが言うように座って、その後、ヨシともう1度立つということはよくある。そうすると花に対する視線も変わるし、(座って)どっしり見ることも必要なんじゃないかと思いました。佐藤浩市さんが演じる利休は最後は茶室に座して亡くなっていくわけですが、全体を通して少ない動きで見せたいとお伝えしました。茶室のセットがすごく狭くて2畳しかないのですが、そういう狭さの中で緊密なる人間関係を作る過程を見せたいので、そうすると必然的にカットバックやアップが多くなるとお伝えしました。すると、それを踏まえて別のシーンでのコンテを聞いてくれたりして、演技を変えたりしてくれましたね。

 

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──目のアップも多かったですよね。

いわゆるクローズアップよりも、更に表情を見せたい時は、目のアップを使いました。

 

森川葵は柔軟な姿勢で現場に臨んでくれていて、これからどんどん伸びる人

 

──ベテラン勢の中で、れんに扮した森川葵さんのみずみずしさが光っていました。

彼女はすごく芝居が上手いし、才能がありますね。れんの絵は現代アーティストの小松美羽さんが担当してくれているんですが、描いている過程を森川さんは立ち会って、小松さんから描き方から絵師の心の動きまでを観察しているんですよね。森川さんも小松さんもふたりとも世の中に対しての視線や考え方がお互いに通じ合ったらしく、森川さんはそういう小松さんの動きをれん役に取り入れて演じてくれていました。

 

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──森川さん、とてもかわいかったです。篠原監督の映画では、たとえば「起終点駅 ターミナル」の本田翼さんや、ちょっと前でいうと「深呼吸の必要」の香里奈さんや「天国の本屋~恋火」の竹内結子さんなど、若手女優のキラリと光るかわいらしい魅力を引き出しているなあと。

役を通して、自分の魅力を出してくれているんです。森川さんの場合は、たとえば専好とのシーンで視線の置き方などに対して、「もう少しこうしようか」などと言いましたけど、とても柔軟な姿勢で現場に挑んでいて、こちらの修正に対してもすぐ適応してくれる。こういう人はこれからどんどん伸びますよ。

 

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